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日々の破片

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2021-10-05

_ 新国立劇場のチェネレントラ

前回のシラグーザのは実に楽しかったチェネレントラだが、今回は新演出。

なんか映画の撮影でプロデューサーというか映画製作会社の息子の太っちょが監督のアリドーロに女優を探せと命令するところから始まって、なんとなくポンポさん的な。

で、始まるとどうもチェネレントラ以外の声が小さい。従者に扮したドンラミーロがチェネレントラと出会って歌うところでもオーケストラにかき消される。

おそらくコロナ対策でオーケストラピットをあまり深く沈めずに浮かせているのではないか? そのためバランスが悪いのだと思う。

とはいえ、ルネバルベッラはなかなか良い声だし(もう少し突き抜けるような声のほうが好きだけど)皆の衆探しに行こうはアンコールに応えて2回歌って(シラグーザもそうだったから、そもそもうまくハイCを飛ばせたら2回歌うというような慣習なのかな?)、なんといっても脇園彩は抜群ではなかろうか。最後の説教じみた歌も全然退屈しなかった。

で、映画演出は、最初なんかどうでも良い演出だなぁと思っていたら、本来は扉を開けるであるとか、回廊を抜けてくるであるとか、物語的に唐突に人が入って来るところがあるわけだが、そういう箇所で3~40年代ハリウッド風の階段を作って降りてくるから、なるほど映画にする意味は立派にあったのだった。

ただ、パリオペラ座バレエ団のシンデレラも映画だったし、モチーフとしてはそれほど斬新というわけでもないかも知れない。

アリドーロが乞食の衣装をかなぐり捨てると天使の羽根をつけてクレーンで動くのだが、クレーンの音のほうが歌声より大きいのはどうかと思った。アリドーロのサゴーナという人は立ち居振る舞いは実に立派でうまいのだが、声が小さくて残念だ(というわけで、日本人のバスなのかと思って観ていた)。ダンディーニも演技も立ち居振る舞いも実にうまくて笑わせてくれるのだが、やはり声が小さい。このあたりはオーケストラが後ろでジャンジャン鳴るわけではないので、コロナ演出で声を飛ばさないようにしているのだろうか? とも考える。

というわけで不満点がないわけでもないのだが、とても楽しめた。

・以前、バックステージツアーに参加したとき、誰かが「日本人の歌手をもっと主役級で起用しないのか?」と質問したら、劇場案内人が「日本人を主役に置くとお前らがチケットを買わないからそれは無理」をすさまじくソフィスティケートした言い方で答えていたが、先日のドンカルロスのポーザ侯の高田智宏やジークリンデの小林厚子は圧倒的だったし、今回のチェネレントラも主役は日本人だがほぼ満席だったので何か時代が変わったのか、または客側ではなく運営側が招聘しにくくなって日本人を起用したら、誰もチケットを買わないという想定がそもそも間違っていて普通に集客できたというだけかも知れない。


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