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日々の破片

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2021-05-05

_ デビッド・ボウイ・モノポリー

連休中に家族でボードゲームでもやるかと、デビッド・ボウイ・モノポリーを買った。

普通のモノポリーは学生の頃買って、妻と暮らし始めた頃に友人たちと良くやったものだが、どこに行ったか全然わからん。

とはいえ、ボードウォークストリートに立派なホテルを建設しても誰も泊らずに破産とか、結局オレンジ色のあたりを購入するのがバランスから一番とかは覚えていなくもない。

で、ツィッターで誰かがツィットしていたのでボウイのやつを買ってみることにしたのだった。価格を見たら、直輸入するのと日本のアマゾンで買うので極端な差もないので普通にアマゾンJPから購入した。

で、とにかくボウイだということしかわからんわけだが、蓋を開けて納得しまくる。

駒は、アッシェズトゥアッシェズの三角帽子、アラジンセインの稲妻、ブラックタイ、ブラックスター、クラックドアクターの骸骨、トム少佐のヘルメットで、見ればすぐにわかるところが、おおなるほど、ボウイモノポリーですなぁと感心する。もっとも実際に駒を並べると、骸骨とヘルメットは見分けがつきにくいし、稲妻とブラックスターは区別しにくく、三角帽子は摘まみにくいとかいろいろあって、稲妻、タイ、ヘルメットで落ち着くことになった。まあタイにはDon't Let Me Down & DownがあるからOKとするか。

ボードは、無条件に支払う桝がステージングクルーやセッションミュージシャン(の雇用コスト)などになっているし、4か所がツアーになっていて(本物はなんだったかな?)これも悪くない。

というよりも、ボードはアルバム年代記になっているのだった。

最初の安い2マスが、スペースオディティと世界を売った男のマーキュリー時代、水色のお買い得がハンキードリー、ジギースターダスト、アラジンセイン。監獄を挟んで犬、ヤングアメリカン、ステーショントゥステーションで、ツアーを挟んでロウ、ヒーローズ、ロジャーでベルリン時代というよりもウィズイーノ、パークを超えてスケアリーモンスターズ、レッツダンス、トゥナイトでツアーを挟んでネヴァーレットミーダウン、ブラックタイ、1.アウトサイドの暗黒時代で、濃い緑がアースリング、アワーズ、リアリティの完全復活自由自在時代。で最後の超高級地帯がネクストデイとブラックスター。

暗黒時代の幕を開けるネヴァーレットミーダウンだが、レオスカラックスがタイムウィルクロールを使っていたりするし、おれにはプリンストリビュートみたいで好き(特にShining Starのかけ声やちょっと高めの声を出して歌っているところとか、おれにはプリンスを真似したとしか思えないのだが、これがすごく好きな曲)だったりするから、買えるなら買う。

大好きなピンクフロイド(は大嫌い)のシーエミリープレイが入っているピンナップスや、犬爆弾のヒーザンが抜かれているが、十二分に妥当で、当然だが、誰も泊らなくてもブラックスターを買いたいとか、何は無くてもロジャーは買うとかなぜジギーが目立たない場所なのか?とか楽しい。

全然ボウイのことを知らない子供も、親の蘊蓄を聞かされてうんざりしながらも、なるほどファンアイテムとしては抜群なんだな! とかわかったような口を利くが、実際、うまくできていて感心する。

ボーナスカード(2箇所)は、サウンドとビジョンでそりゃ引かなければならなくなれば、ブルーブルーエレクトリックブルーとか口ずさみたくもなるものだ。で、カードがいちいちヒット曲にかけた指示になっていたり作り込みが素晴らしい。

デビッド・ボウイ・モノポリー(-)

実に良いものだった。


2021-05-03

_ 博物誌的マンガ

ダンジョン飯が圧倒的なのは、妹救出であるとか謎の日本人であるとかエルフのダンジョン破壊作戦であるといった人間ドラマではなくダンジョンという場とその場を構成している諸要素のもっともらしい分析にあるのだとしたら(で、そう考えているからこう書いているわけだが)、21世紀になってわれわれは博物誌的マンガという新しいジャンルを手にしたことになる。

ダンジョン飯(九井 諒子)

いろいろ考えてみても、ロン先生の虫眼鏡のような博物誌的マンガではなく本物の博物誌のマンガ化くらいしか思いつかない。

(努力友情根性が大テーマであれば、当然、博物誌的マンガとなるわけもないので集英社系はすっぱり考える必要もない)

とはいえ、たった1作ではそういうジャンルと認識できるわけもない。

次に博物誌的マンガを読んだのは、ダンピアのおいしい冒険でびっくりした。抜群におもしろいではないか。(最初、神保町の本屋の窓にでっかなポスターが貼って合って気になって、結局近所のあおい書店で買った)。

本当に博物誌学的な記録を残した船乗りの記録を元にしたようだが、マンガとして完全に昇華しきっているのだから、これもまた博物誌的マンガといえる。そもそも「僕は知りたい、世界の全てを」という帯の惹起が、支配するためでも、征服するためでもなく、ただただ純粋に知りたいのだという欲望として確かに成立していた。

ダンピアのおいしい冒険 1(トマトスープ)

(早く続きが読みたい)

で、昨日知ったのが、ヘテロゲニア リンギスティコで、ついにここまで来たかというか、3作を数えるに至ったのだから、ここでジャンルとして確立したと言える。

これはおもしろい。腰を痛めて療養生活に入った教授の代わりに魔界へ旅立った院生あたりが、異種とコミュニケーションをとるために、肉体の構造であるとか(たとえば蛇に手が生えた種とは、振動でコミュニケーションをとる)、食生活であるとか、社会構造であるとかを観察して回る(一応、人間ドラマとして人間界と魔界の望ましい共存のための調査であるとか、教授の思想背景を知って行くとか、年老いたケンタウロスが優しいとか、なぜオークの言語学者がいるのかといった物語を駆動する謎やミッションはそれなりに用意してはあるが、明らかに作品の主眼はそこではない)。

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~(瀬野 反人)

(妙に安いと思ったら、半額セール中だった)


2021-05-02

_ 三色菫・溺死

神保町をぶらぶらしていたら、店頭に薄い文庫本を20冊くらい並べている店があって、ふと眺めると、シュトルムの三色菫・溺死というのが目についた。

シュトルム=みずうみと文学史上の一言知識はあるが、それ以上ではないので、これだけ薄いのであればすぐ読めそうだし読んでみるかと手に取って、裏表紙をめくれば鉛筆で100円とまっとうな値段が書いてあるので、そのまま買って帰った。で、読んだ。

1980年代の22刷なので、当然のように舊仮名舊漢字は良いとして、選ばれた言葉が美しくてまずそこに驚いた。

で、翻訳者を見ると伊藤武雄とあるが、考えればドイツ文学はそれほどは読んでいないので知らない。知らないので検索すると情報が出ない。やっとウィキペディアに出ているところにたどり着いたら、さらに(ドイツ文学の訳業を持つ伊藤武雄は二人存在する)があっておもしろく思った。

とりあえず冒頭の三色菫を読み始めると、母親を亡くした娘、その父親、父親の再婚相手(登場時点ではまだ再婚していない)の物語が始まる(というと作品としては正しくなく、最初の数ページにわたって、舞台となる家とその複数ある庭、樹木、内装などがことこまかにカメラが入って這い回る。オーソン・ウェルズの作品を思わせる。で、そのような描写がまさに伊藤武雄の面目躍如なのではないか? とにかく永遠のように美しいのだ)。

それにしてもさまざまな植物は登場すれども三色菫は出てこないな、と思いながら最後のページにくると、訳注として継母の縮小形を付けると三色菫となる、とあって、なるほどと思う。さらに、三者三様の細かな心理が描かれている点も三色菫なのかも知れない。

佳品だった。

で、続く溺死を読み始めると、うってかわって読みにくい。

あまりに沈鬱なのだ。

子供の頃に訪れた友人の家(それは教会の牧師館である)、その教会、庭、通学路、そういった描写の中に教会に架けられた陰気な牧師の肖像画と溺死した子供の2つの絵画に惹かれたことが示される。いずれも優れた作品だが、由来がわからない。画にはC.P.A.S.と記されている。A.S.は溺死として、C.P.が謎なのだ、と牧師が教える。それは父親故にでは? いや、そのようなわけはなかろう。と会話する。

成長して町の商家を間借りするために見学に入った部屋で同じ画家の異なる作品を見出す。家主に聞くと遠い先祖の画業だと言われ、その人の画材を見せられる。そこに入っていた2つの手稿を読み始めて、画に記されたC.P.A.S.が解き明かされる。

17世紀、魔女の火炙り、貴族と平民の身分差、先進国としてのネーデルランドの画家たちといった要素を散りばめた物語が画家の筆によって語られる。

もちろん、既に題名からも冒頭の画からも、子供は溺死することは明らかで、そこには何の謎もないわけだが、にもかかわらず、三色菫とは変わって徹底的に画家の一人称で描かれているため、他人が何を考えているのか、本人不在のところでどのような経緯があったのかは最後まで明確とはされない。

代わりに景観の緻密な描写がある(それが三色菫――こちらも祖母の庭と呼ばれる場所については謎めきが多いのだが――の開放的な美しさとは異なり、森の沈鬱を通奏低音として全体を貫いている。時々聞こえる鶯の声が美しい)。

一方で、修道尼院からの手紙を隠し持ったまま酒場を訪れたことによって領主の息子との一触即発の危機からの脱出、森での猛犬との追走劇(あいまに挟まる夜鳴き鶯の声)から危険な樹木を登ってからの朝に至るまでのスリルとサスペンスがもたらす娯楽性がある。硬質な文体を保ったままの息もつかせぬ娯楽性というと、同じ地方出身のドライヤーを思い出さずにはいられない。

一時代を築いた作家の作品だけに確かに読む価値はあったし、デンマーク生まれなのにドイツ文学者というシュトルムの微妙な歴史的かつ地理的な位置づけが反映されているようで興味深くもあり、何よりも伊藤武雄の文章の彫琢に感嘆した。

三色菫・溺死 (岩波文庫)(シュトルム)


2021-04-30

_ ライティングソフトウェア

翔泳社の野村さんから1ヵ月前くらいにもらったライティングソフトウェア を 連休に読んでみるかと開いたら、想像しているものと違って驚いた。

タイトルからコードの本かと思ったら、全然違う。

そもそもよく見たら副題が「プロダクトとプロジェクトを泥沼から救う工学的手法」とかある。

さすがに、それはこけおどしだなという点も見られるが(リスクの計算のためにΣを持ち出して来て、それは確かにリスクは最初の時点からリリースした後までどんどこ積みあがるものだから正しくはあるけれど)そこで持ち出して来ているコストをリスクが上回る点を求める関数の正しさは保証できないのだから、現実的な正しさとはつながらない。

と書いてふと気づいたが、そういうレベルの話ではないのか。

そうではなく、説得力のある見積もりを提示するための基礎資料を作成する必要がある場合に、過去の類似プロジェクトなどから求めた数を適用させることで、コスト(プロジェクトに必要となる人員というよりもずばりお金)を引っ張るためのツールとしての式とグラフを示しているわけだな。

という点から、名前はライティングソフトウェアだが、(冒頭に戻るが)名前から類推される、クールなコードを書くために役立つ本ではなく、クールにプロジェクトを遂行するための道具立てを詳説した書籍なのだった。

扱っている範囲は、大きなソフトウェアアーキテクチャと、ソフトウェア開発プロジェクトの2つに分かれる。アーキテクチャが第1部で、プロジェクト管理が第2部となっている。第2部が第1部の倍の分量があるのが特徴だ。

第1部は、大きなシステムの分割設計についての考え方を示す。当然、大きなシステムは分割しなければ管理できない。

筆者は最初に機能別分割の弊害を詳細に詰めて行く(あくまでも大きなシステムを想定している点が重要)。

そうではなく、変動点に注目する。このアプローチは良いと思う。

第2部は、コストとリスクに注目したプロジェクト管理のためのデザイン方法となる。おそらくこの部分が、本書の白眉となる。この箇所が不要な人は本来は存在しないはずだが、一方で本書のレベルで必要となる人もそれほどはいないだろうという点まで踏み込んでいる。

付録に実際のプロジェクト運用などが書かれている。おもしろい。

で、ことそういう点から本書を見れば、まとまりかた、読みやすさ、ステップの追い方、ボキャブラリーの習得、そういった点で、教科書ではない一般的な技術書としてはあまり類がない存在に見える(というか、そういったものがおれのスコープ内だったときは見たことがない)。

手に取ってぱらぱら見るだけでも、そういった点からの価値はわかるし、それは逆な利用方法にも通じそうだ(机の上に置いてあったとして、誰かが何気なくパラパラ見ると、「こんな本を読んで勉強してるのか。こいつただものじゃないな」と思わせる――ろくでもない利用方法ではあるが)。

というか、読んだ限り本書は本気の、良いプロジェクト運用のための絵を書くための高速道路だ(ライティング・ソフトェアプロジェクトというべきだろうというか、原副題のA Method for System and Project Designが圧倒的に正しいというか、英語と日本語のSoftwareの違いなのかな)。もちろん第1部については、プロジェクト運用の絵とは関係ないし、ここから大局的な設計(それをソフトウェアアーキテクチャと呼ぶわけだが)の1つの良い観点は得られる。

結論すると、当然、日本のSIならば読んだほうが得な人は多い。自分のロールや目標とするロールが合致する人は連休中の勉強用にお勧めする。

ライティングソフトウェア(Juval Löwy)


2021-04-22

_ 高卒マンガと中卒マンガ

コミックバンバンのコインを使って全巻無料シリーズでちまちまと読んでいても、朝4+1、夜4+1、深夜5で1日に1巻相当を読めることもあって、頭文字Dと将太の寿司を読破した。

どちらも、連載時にはマガジンは読んでいない(チャンピオンだった)ので話に聞くだけだったが、読んでみればおもしろいものだ。

頭文字D(1) (ヤングマガジンコミックス)(しげの秀一)

で、なんとなくではあるのだが、頭文字Dの主人公は貧乏な豆腐屋の息子なので高校を卒業したら運送屋に就職して夜な夜な峠を走り込む(というか、父親の手伝いで早朝に豆腐を配達するというか、もっとも後半はツアーに参加しているところしか描写がないので本当に仕事をしているのかは怪しい)し、将太は家業の寿司屋が潰されそうなので中学を卒業したら東京の鳳寿司で修行を始めるとか、まったく大学とは縁がないところが共通していておもしろいと感じた。

どちらも1990年代だから、2020年代の大学進学率が過去最高の54.4%よりも低いわけで、人口比で考えれば少しもおかしくはないのだが、これまで意識していなかった主人公の学歴になぜ引っかかったのかと考えた。

もちろん最初に読んだ頭文字Dのせいであって、後から読んだ将太の寿司はそういう設定でOKなのだが、頭文字Dに引きずられて、おやこっちの主人公は中卒かと思ったのだろう。

ということは、頭文字Dのリアリズムが凄いのだった。なぜ高校生なのにドリフトの天才児なのか、それはこういう境遇で親父がこうい訓練をさせたからで、そもそも親父とその仲間がこういう具合で、と、物語の構造がうまいのだ。

いずれにしても、どちらの主人公にも共通しているのは、事前の徹底的な調査(片や峠のどのカーブがどうなっているかと、片や現在の市場にはどういう魚が出回っていて米の産地はどこだとか)と構想(どういう組み立てでタイヤやエンジンを抑制しながら攻めるか、どういう組み立てで魚と米を寿司に仕立てるか―特に10貫勝負のようなやつ)、設計(どういうコース取りでカーブへ入ってどこで減速してドリフトさせてエンジンを何回転まで持ち上げるか、この素材をどう調理してどう調理した米と組み合わせるか)、実装(実際のハンドル、ブレーキ、アクセル操作と、包丁捌きと火加減と握り方など)が抜群なことだ。

何かをするときに、調査して構想して設計して実装するといえば、おれの仕事でもあるプログラミングも同じことだ。

使えるリソースと成果物が求める速度(実行時と実現化までと両方)については調査と構想(アーキテクチャ)が必須で、それを具体化するためには設計が無ければ話にならず、それだけではもっと話にならず実装する必要がある。

こういうことは大学で習得することのように漠然と思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。(というか、知り合いに高卒の人もいるが当然のように全部できているわけだから、それほど学歴は関係ないのは知ってはいる。おそらく高速道路に乗ったか乗らないかとかの違い程度なのだろう)

というか、マンガ家の仕事がまさにそうだった。その点において、どちらの作品も調査から実装まで完全に行われていて、作中との二重構造になっている点がおもしろい。

【極!合本シリーズ】 将太の寿司1巻(寺沢大介)

とはいえ、将太の寿司で読んでいて本当におもしろかったのは、後日談のような鳳寿司の新親方(元の話では意地悪なアザミさん経由で巨大なラスボス)の息子のエピソードだった。

本筋とは関係ないが、将太の寿司の恋人はウィーンに音楽留学してそれなりの成績を収めているのに、コンサートピアニストはおろかピアノ教室の先生すらしていなさそうで、そこにはすごく違和感がある。


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