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日々の破片

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2021-01-22

_ 嘘喰いを読んだ

コミックバンバンみたいな名前のアプリを入れて読み始めたらやたらとおもしろいので結局、全巻購入するのとほとんど同じような価格で課金しまくって読破してしまったが、この作家すげぇやつだ。

日本の裏社会暴力マンガのフレームワークでダークファンタジー(英語だと。日本語だと言葉本来の意味での幻想小説、たとえばETAホフマンやエーヴェルスの作品群に対して用いる)を展開した作品でこれまでまともに読んだ(要は通読した)のは新宿スワンだが(多分、この形式の大元は男組や野望の王国の雁屋哲とさかのぼれば手塚治虫のロックを主役にした作品群なのだろうが、貸本の辰巳やつげの弟のほうの系譜と言えなくもなさそうだ。もしかすると米原秀幸のウダウダもこのジャンルかな、というかそうだなと一瞬思ったが、チームの特徴配分とか考えるとRPGというかおそらくドラクエ以降として別建てで考えた方が良いのかも知れないかなとかいろいろこちらにも思考が伸びておもしろい)、調べると同時期なんだな(集英社と講談社のヤング(ジャンプ|マガジン)バランスとしてこれはこれですごくおもしろい)。

どちらも大傑作だと思うがスケールの大きさでは嘘食いのほうが勝っているように見える(かっているわけではない。相手がまけたわけではないからだ。まさっている)。

しかし本来見開きの週刊誌で読むマンガだろうからページ単位に読むと何がどうなっているのかまったくわからない点が多過ぎて相当の情報を誤読しまくっていそうではある。

この作家の癖なのだろうが、同じコマの中に同一人物の全体の動きとクローズアップを重ねている点と、遠目だと相当異なる個人(服が違うし)の顔が、クローズアップだとよほどうまく特徴的な点を示していないと5人単位くらいで区別がつかない(読み込めばつくのだろうけど)点が難読化させまくっている(おれが悪い可能性も高いな)。

しかも、吹き出しがコマを飛び越えて書かれていたりするうえに、そもそもそのコマ自身に発話者の表示を省略(というよりもあえて書かない)したり、マンガならではのセリフの短縮化のために、これまた余程特徴的な文末表現を伴う人物以外のセリフの場合、誰が何を言ったかがわからないことおびただしい(特にひどいのが、all[-2]話のダイヤモンド製造者とファンド設立者のモンタージュ部分で未だにどれが誰のセリフなのか今ひとつ見当がついていないけど、これもおれの読解力不足の感もある)。

とにかくモンタージュとフラッシュバック、クローズアップ、ミキシン、ザッピングあらゆる技法をこれでもかと投入しているので、どれが布石でどれが遊びでどれが息抜き用か区別するのが難しい。が、それが話の内容とマッチしているのでどうにもしようがない。

しかも、個々のエピソード(これがシリアスなものからユーモラスなものまで千差万別で作者のポケットの多さには舌を巻かざるを得ない)をジグソーパズルのピースとしてみた場合に、あるピースについては枠線だけで中を書かずに放置みたいなものもやたらとある。書かなくてもこれまでの経緯からわかるに決まっていて面倒だからパスみたいな感じだ。これも特に極端なのがall[-2]のジョーカーをめくった後の箇所だ。

本来なら小説として記述されていれば良いのだが、暴力表現(というか肉体の動きの表現が実に美しい。この美しさも魅力だ)が圧倒的なので(個々の動きが)マンガでしか表現できないわけで、難しいのなんのって.、そういう意味ではここまで読解しにくいマンガを読んだのも初めてかもしれない(同一ジャンルとして比較にあげた新宿スワンは遥かに単純な構造だ)。

それにしてもびっくりした。集英社のジャンプ(ヤングはつくけど)マンガだから、せいぜいカイジの劇画版だろう程度に読み始めたら(冒頭2話は、カイジのダメ人間人格とカイジの闘争人間人格を2つに分けて劇画にしたのかな程度の雰囲気で始まる)とんでもない話だった。世の中にはすげぇものがごろごろしているんだなぁ。読めて良かった。

嘘喰い 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)(迫稔雄)


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