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日々の破片

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2011-06-13

_ 自ら死んでいく少女たち

新国立劇場で蝶々夫人。プッチーニ好きなのだが、蝶々夫人は舞台初体験だけではなく、全曲の歌詞を読むのも初体験なのだった。

とりあえず、何よりも、オーケストラが素晴らしかった。東京フィルだが、いつもとちょっと違う。最初、ピットの深さが浅いのかと思ったが、そうでもないようだ。ピットの深さが気になったように、音がいつもより格段に鳴るのだ。音楽で人の心を動かすのは、一にメロディ、二に響き、三に音量だ。メロディは希代のメロディメーカーのプッチーニだから当然として、響きは曲のオーケストレーションのうまさに加えて見事な合奏、そして音がえらく鳴る、これで泣かなければ嘘だろう。

例えば、ある晴れた日にで、盛り上がったところで十分に鳴っているのがさらに一段鳴る、これは驚きだった。

最初にこれはすごいと感じたのは、ピンカートンが将来のアメリカ人の妻に乾杯とかふざけたことを言っていると、コーラスが聴こえて来て、蝶々夫人が出てくるところで、間といい、響きといい、音の盛り上げ方が実にうまくて、それはプッチーニの才能だと思ったのだが、今にして思えば、演奏が抜群だったのだ。

指揮者がすごいのだろう、と思ってカーテンコールで子供からオペラグラスを借りて見てみると、これが若造で驚く。とんでもない逸材みたいだ。イヴ・アベルという創世記みたいな名前で覚えやすい。

アマゾンで調べると若手らしく妙な演目で載っている。

ヴェルディ作曲 歌劇 オベルト ビルバオ歌劇場2007 [DVD] [Import](イヴ・アベル(指揮)/アストゥリアス州立交響楽団/ビルバオ歌劇場合唱団/イグナシオ・ガルシア(演出)/イルダール・アブドラザコフ/エヴリン・ヘルリツィウス)

歌手では、特に領事をやった人(甲斐 栄次郎)が良かった。演技力も重要なんだな、と、観ていて気づかされるうまさ(歌も良いのだ)。

舞台は階段と柱、散った桜の花をうまく使った象徴的な美術とまっとうなコスプレの演出で、これが地味に良い。舞台があまり出しゃばらないので、歌手の演技と歌が生きるのだな。

これまで観た新国立劇場のオペラでベストだ。

蝶々夫人は、何となくそのての職業+夫人の語感から間違って考えていたが、最初が15歳という設定で、数ヶ月ピンカートンと過ごして3年待つのだから、たかだか18歳で死を選ぶのだった。15歳という年齢と、激しく勘違いをしてしまい(結婚の社会的意味を誤解して)自ら死ぬというのが、14歳のジュリエットや、多分17歳より下のエリザベートなどと重なる。

とすれば、コジファントゥッティの爺さんが仕掛ける結婚前のゲームは、極めて正しい教育なのかもしれない(これもおそらく姉が15歳、妹14歳とかだろうから)なぁ、とかオペラの世界の整合性の取られ方に興趣を覚える。

それにしても、ピンカートンの徹底的な腐れ方の描写には、原作者のアメリカの女流作家のフェミニズム(の萌芽)を感じる。蝶々夫人が歌う、アメリカの法律では夫からの一方的な離婚は許されないや、結局事後処理の段取りはピンカートン夫人(本妻)とスズキに任せられるとか。

心優しいが、どうにも非力な領事の名前がシャープレスというのは面白いな、と思った。

歌詞がわかったところで、あらためて持ってるカラスのやつを聴こう。

プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」(カラス/ゲッダ/カラヤン)(1955)(カラヤン)


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