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日々の破片

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2020-04-04

_ ペドロ・パラモ

燃える平原がおもしろかったので、フアン・ルルフォのペドロ・パラモも買って1年半放置していたみたいだが読んだ。220ページ程度の薄い本だが3日間くらいかかった。

物語は大地主のペドロ・パラモと3人の息子、神父、雑貨屋、ペドロが愛した女性たち、ペドロの番頭、弁護士などの視点でばらばらに語られ、特に私は~で名乗ってから語り始めるわけではないので言及された人物や事象から、それがいつの誰のエピソードかを想像しながら読み続ける必要があり、しかし人名がドロレス、ドロリータ、ダミアナ、ドニスみたいな馴染みが無くてしかも良く似た音節でたくさん出てくるのでところどころ自分が今どこにいるのか見失ったり、それが誰だったか(突然断片が挿入されるので初出の場合も多い)わからなくなって読み返したりするため時間がかかる。

本で読んで良かった。これKindle(のページめくりや検索速度)だったら読めなかっただろう。

それでも最初は母親が死んだので見たこともない父親のペドロ・パラモから財産か何かをもらおうと旅立つところから始まるので普通に読み始められる。というか、そういう構成だとは知らずに読み始めたので普通に読み始めた。

それが無人の村としか思えないところで出会った老婆と会話しているうちに母親が先日老婆と会話したことになり、老婆そのものが死者なのかな? と考え始めたところで、ペドロ・パラモが子供時代にトイレに籠っている描写にいきなりジャンプ(この子供がペドロ・パラモだと判明するのはすごく後のほうで、それはスサナというペドロが最も愛した女性の名前からなのだが、そんなことはその時点では全くわからないまま、主人公の回想なのか? と誤解したまま読み進めているうちに、この作品は、愛と性と死の三位一体なのだとわかってくる。なので時間はどうでも良いのであった。

そうとわかれば読み方を変えるのだが、そうする必要もなく、無惨極まりないペドロ・パラモの生涯が語られる。視点は多いがほとんど起伏がないのが驚くところだった。おもしろかったが、燃える平原の鋭利さのほうが好みだ。

それにしても暑苦しい地方で汗でぬるぬるしながら、周りの牧場主たちを殺したり罠にはめたりしながら、支配者となった(しかし諸事情から金はほとんどない)ペドロ・パラモが最後、遠くを眺めながら椅子に腰かけている風景が印象に残る。

1950年代に書かれた小説としてはちょっと驚くほど前衛だが、メキシコのわけのわからなさをまた1つ学んだ。作家は本作を最後に筆を絶ったらしい。

ペドロ・パラモ (岩波文庫)(フアン・ルルフォ)

不思議なのはメキシコにまつわる作品は、どうしてこうも生者と死者の境界が曖昧なのだろうか。そういう不可思議な感覚はどこから生まれたのだろう。なんとなくだが子供の世界観っぽい。

最初に出会ったのは小学生のころに読んだブラッドベリの死者の日のパイの話で、その時はなんだかよくわからなかったが、その後にブニュエルやエイゼンシュテイン(いずれも外部から来たところが興味深い)の幾つかの作品で妙な感覚を味わって(特にブニュエルの昇天峠は無茶苦茶だ)、どうもそれが一般的な理解だと気づいたのは、先日録画で途中まで観たリメンバーミーだ。死者の日(お盆と同じで死者が生者の世界に戻って来る)に死者の国に迷い込んで死んだ家族と和解する(のかどうか最後を観てないのでわからんけど)話だが、完全に生者と死者が地続きで、なるほどメキシコのイメージはこれなんだなと得心させられた。

リメンバー・ミー MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray](ディズニー)

(なぜか録画に失敗していて後半が無いのだがどうなったのだろうか)


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