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日々の破片

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2020-02-01

_ ドリームガールズ

シアターオーブでドリームガールズ。

映画は観たかったが結局見損なったのでDVD買って観た。

ドリームガールズ (字幕版)(ジェイミー・フォックス)

モータウンの社長の成り上がり物語にシュープリームスのエピソードを散りばめてミュージカル化したみたいな内容でおもしろかったので、舞台も楽しみだ。

この作品の最も優れた点は、バックコーラスからトリオデビューとなるデビュー曲のドリーミングの「We are your dreamgirls」というサビのメロディーとアレンジで、これが無ければ映画としてまったく説得力が無いとさえ思うのだが、残念なことに舞台だとささっと終わってしまった。

このサビの部分が、オリジナルなのに元ネタのシュープリームスの楽曲にうまく似ていてそこが抜群だ。

で、もちろんシュープリームスは好きで、御多分に漏れずストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ(80年代に核競争をモティーフにしてUSのロックバンドにカバーされてリバイバルヒットしまくって知ったわけだが、それにしてもアトミックカフェの映像をモンタージュしまくったMVのできも良かった)も好きだし、ベイビーラブも好きだ(この曲、サディスティックミカバンドのヘイベイビーの原曲としか思えないんだが実際のところどうなんだろう)。

The Supreme Songs(シュープリームス)

映画よりもエフィー(一番の歌唱派なんだけどマーケットにいろいろな点から合わずに追い出される)に力点が当てられているようだし、映画だとエディーマーフィーを持ってくることで間違いなく主役のマネージャよりも途中まで売り上げを支える実力派男性歌手(すでに名前を忘れた)のほうにスポットが当たっているように感じた。

舞台はカーティス(車のセールスマンというUS文脈では非常に悪い男)が、芸能界で一儲けしようとアポロ劇場で開かれているオーディションでマネージメントの元ネタとなる歌手を探しに来るところから始まる。

カーティスの考えは、R&Bもソウルも素晴らしいが、黒人マーケットという狭い範囲でしか売れないのがネックだ。そこで白人市場でも売れるようなサウンドと歌手を使えば、とてつもなく儲かるに違いないということだ。

そこにシカゴからドリーメッツというトリオがやって来て、うまいこと丸めこんでマネージャとなる。

カーティスはソウルの女王のようだがわがままでビジネス文脈を読めず、しかも白人受けを絶対しなさそうなリードボーカルのエフィーを下ろして、ベイビーフェイスで声もかわいいディーナ(当然、ダイアナロスがモデルになっている)をリードボーカルにして売り込むことにする。

1幕の最後にエフィーが延々と悲しむ歌を歌うが、歌手のうまさもあって素晴らしい。ただし、このエフィーという人は最初からやたらと文句が多く、自分勝手ないやな奴として書かれているのでまったく同情はできないのだった。

それと同時にベテラン歌手も白人マーケットへの売り込みをえさにしてマネージメントを実質的に乗っ取る。

が、このベテランは、最後の最後で、エボニーとアイボリー(というサタデーナイトライブのネタ)路線から下品で猥雑なソウル回帰して袂を分かつことになるのだが、このあたりおもしろい。

エフィーの弟のCCは子供だけあって柔軟な曲作りができるので、最初はキャデラックの歌を作って売れ始めたところで白人歌手に盗まれる。

当時は盗作とか著作権という概念がないのかな(いや、アレンジが異なるし言葉も変えているからアイディア盗用は盗作ではないとなるのか?)。

いずれにしろ、黒人チャートで目立つとすぐに白人に盗まれるので、ラジオ局のDJたちに対する買収工作などを駆使して先回りしてトップに入るように手を打つ(ということは、さすがにチャート上位にいれば、盗みは盗みと認識されるということなんだろう)。

それと同時にマイアミのホテルに交渉して黒人歌手をディナーショーに登場させることに成功する。ここでもベテランは下品なダンスをして(そいえばプレスリー(カーティスが考えたのは、逆プレスリーなわけだが)がちょっと腰を振ったら大問題になった時代だ)顰蹙を買うのだが、一方、ドリーメッツあらためドリームスは着実に成功する。ディーナはディーバのような扱いを受ける。

大成功したわけだが、ディーナは自分の立ち位置に自覚しはじめる。他のメンバーも同様。CCはあまりにもカーティスが曲を変えすぎるのでついに離反して(エフィーを追い出すときにはカーティスについていた)エフィーと和解し、すごい曲を作る。チャートを上昇しはじめる。カーティスも負けじとドリームスバージョンを売り出し、買収工作をまたもや繰り広げる。

ただ、ここでおそらく重要なのは、エフィーの歌がチャートを昇れるのは、カーティスによって白人市場にブラックミュージックを浸透させたという下地があったからなのは間違いない。ある程度、白人市場におけるブラックミュージックが浸透したので、より本格的なソウルを市場が受容できるようになっていたと考えられる。という意味において、CCもエフィーもカーティスの恩恵をすさまじく受けている。逆に言えば、市場開拓者としてのカーティスの役割はここで終わったわけで、そこまで含めて物語は大団円に向かうことになる。

独立して映画に出たり、アーティストとして振舞いたいディーナに対して、君はおれの夢なんだと切々と口説くカーティス(この曲は良い曲で、つい最初はディーナもほだされてしまうのだが、2回目に歌うとさすがに通用しないという、おもしろい使われ方をする)。

最後、エフィーとディーナは和解する。解散コンサートをアポロシアターで開き、最後に4人目のメンバーがいるんだよとエフィーを招き入れる。1曲歌った後に、一瞬、ドリーミングをトリの曲として歌っておしまい。

おれの音楽指向は白人寄りなわけだから、始まって最初のうちのソウルよりも、ドリームズになってからのメロウでスィート路線の歌のほうが好きだったり、車のセールスマンというのは独立した戦略家だから嫌われるし、逆に市場を変えたときもマーケティング観点を強く持つのかなとかいろいろおもしろかったりするし、ベテラン歌手の歌はあまり好みではなかったりとかいろいろだが、楽しめた。特に天井にカメラを取り付けて踊りの全景を背景のスクリーンに映す試みはなかなか良いと思った。逆にそういうライブ映像をうまく使うことで、テレビ局がいかにディーナを特権的に扱うかを強調するのもうまい。


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