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日々の破片

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2019-05-17

_ PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 読了

クーリエジャポンの紹介記事というか抜粋が抜群におもしろかったので、PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話を買った読んだ。

最後の3章くらいのああ西海岸の70年代文化圏の人なんだね、という箇所を除けば(いや、ここも含めても良いのかな。それにしてもボームのホロニズムがいきなり出てくるのには驚いたが、西海岸だなぁ)抜群におもしろかった。翻訳もうまいね、と思ったらベゾスやウォズニャックの本でさんざん読んできた人だった。

ジョブズの友人のローレンスはジョブズからピクサーの財務責任者になってくれと電話を受ける。シリコンバレー風の企業弁護士からキャリアを開始しているローレンスにはピクサーというのは全くの興味の埒外だし、オフィスは石油タンクの前のぱっとしないうえにゴールデンブリッジの向こう側だし、しかも業態もこれまで扱ったこともないエンターテインメント圏の企業ということでしり込みする。

が、実際にピクサーが製作中のトイストーリーの冒頭を観させられて感銘を受けて、結局引き受けることにする。

いっぽう毎月数100万ドル(億円だ)が回収のあてなく単に出て行くピクサーにジョブズはいらいらしている。さすがにマネタイズできないと持たない。ネクストもだめ、全然だめな状態で落ち着かない。1994年頃のことだ。しかも投資額がでかすぎるのでピクサーの従業員にストックオプションを渡してもいない。いっぽうピクサーの従業員は一生懸命に未来のアニメを作るのだと頑張っているが、ストックオプションがもらえていないので金銭的には不満の固まりでもある。落としどころを探すのもローレンスの仕事だ。

この本が抜群におもしろいのは、テクノロジーでもアニメでもなく、マネタイズと契約が主眼な点にある。しかも、バックグラウンドに、テクノロジーとアニメとディズニーがある。興味の種が尽きない。とにかく、落としどころをどう設定するか、そこへ向けてどう回りを巻き込むか、仕組みの設計と実装の話なのでおもしろいことこの上ない。

もちろん、IPOが成功し、トイストーリーは大成功、ジョブズはビリオネアになり、その後のすべての作品がほぼ大成功、ピクサーの残念な話はジョンラセターの失墜くらい(というのは現在の話で、本書の範囲ではない)だ。

そのジョンラセターは主役側ではないが、2回、目立つ登場をする。

1つは、ピクサーというブランドをディズニーに認めさせるかどうか(その条件によって、ディズニーとの不平等条約を解消できるかどうかという論点)で、あっさりとブランドを守るという側に立ち、ジョブズも賛同する。

もう1つは、クリエイティブへの投資判断を誰がするかという株式が公開された企業でのどうやらきわめて重要な論点で、おれたちのチームに決まってるじゃんと(映画業界的には)あり得ない選択肢を提示するところ。

本人が書いているからある意味当然なんだろうが、とにかく著者のローレンスがえらくいいやつで、いいやつなだけに、出てくる人間すべてが魅力的に描かれている(裏側でえらくやっかいなことがアイズナーとジョブズの間で繰り広げられたことが後になって触れたりはしているが、登場するシーンでは、全員、みんな魅力的ないい奴ばかり)ことで、このあたりも読んでいて気分良いのかも知れない。

あーおもしろかった。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話(ローレンス・レビー/井口耕二)

アニメとマネタイズというのは実は物語的に相性が良いのか、映像研とか銭(最初の章)とか、おもしろいものが多い印象を受ける。

映像研には手を出すな!(4) (ビッグコミックス)(大童澄瞳)

銭 壱巻 (ビームコミックス)(鈴木 みそ)


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