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日々の破片

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2019-04-29

_ テッド

2週間前くらいに、妻がアマゾンプライマーになっていろいろビデオを観まくっていたが、テッドがとてつもなくかわいいから観ろというので途中から見た。水族館の暗いところでテッドが振り返るシーン。

そうそうフラッシュゴードンはクイーンだったとか。

そのあとそのまま観て、どうやって生命が吹き込まれたのか聞くと忘れたとか言い出す。星に願いをかけたんじゃないのか? と聞くとそうかもとか曖昧。しょうがないので冒頭も観ることにしたら、いじめられているユダヤの子にもいじめられる主役が祈ると、たまたま外では星が落ちるということになっていってなるほどうまいなとは思った。親がわりとさくっと現状を納得するところが素敵だ。

眉毛が下がっているところがポイントだった。

テッド(字幕版)(セス・マクファーレン/アレック・サルキン/ウェルズリー・ワイルド/スコット・ステューバー/ジョン・ジェイコブス/ジェイソン ・ クラーク)

_ 宇宙人ポール

テッドを観終わった妻がなんだかどえらくおもしろいというので、これは最初から観た。

相当おもしろい。

最初、女の子が外の光に驚いていると絵に描いたような宇宙人が出てくる。

とてつもなく冴えない二人組が、イギリスからコミコンにやってくる。カメラの視線が外部的ではなく同士的なのでファンジン映画なのかな。この二人が主役なら、ハリウッド話法の映画ではないな、と思いながら観続ける。

おっぱいが3個ある宇宙人が表紙のつまらなそうなSF同人誌を作っているらしい。太ったほうが作家で髭が絵描きらしい。ビッグネームに鼻であしらわれる(このビッグネームの作家にはモデルがあるのか?)。

次にUFOの聖地巡りになる。って、これファンジン映画だな。

ホテルに行くたびに男二人ということで勘違いされるので面倒になってキャンピングカーを借りて旅を続ける。

そこにやたらと口が悪いというか、俗っぽい表現でしかしゃべらない宇宙人が出てきて一緒に宇宙人を帰すための旅が始まる。

さらに停めたモーテルがインテリジェント・デザイン主義者とその娘が経営していて、ひと悶着のすえ、インデリジェント・デザイナーの娘も一緒に旅をすることになる。

SF本屋での、おれの記憶だとパーフェクトワールド(新興宗教にかぶれた親子の頑迷をほぐすという点で同じテーマでもあるから、それなりに影響されているのかも知れない)のキャスパー坊やみたいな子供に助けられての冒険とか、いろいろあって、冒頭の少女の成れの果てを拾って、最後はエイリアン退治といえばなるほどこうなるのかというバトルシーンがあって、未知との遭遇の白夜のセーヌ河のでっかな船(追記:ここにもブレッソンだ)が去って行く。

最後、この二人組は次の年(だと思う)のコミコンで、ネビュラ賞を受賞する。良かったね。

なんで、テッドといい、口が悪い異形の映画を立て続けに観ているんだ? と不思議になるが、要はリコメンドシステムのせいだな。

地味に傑作だった。というか、地味ではないな。ジャンル映画には違いないが、相当良い映画には違いない。おもしろさは抜群、コメディも良い。が、なぜかあまり手放しの賞賛はしにくい映画でもある。

宇宙人ポール (字幕版)(サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/ニラ・パーク/ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー)

_ ビッグフィッシュ

というか、お前は買ったまま10年以上放置するのはやめて、さっさとビッグフィッシュを観ろ。ダンボの原型でもあるのだぞ(サーカスか、と観ていてわかった(父と子供の話でもあるな))、と、妻におどされてビッグフィッシュを観る。1000円で買ったらしい。

で、封を切って観始めた。傑作なのはわかっているが、想像しているよりもさらに傑作だった。

記憶はおもしろく、言葉は流れ、ティムバートン最高! という映画だった。

それにしても結婚式の日にブチ切れて3年間口も聞かないって、どこかで聞いたバルタザールだ(ここで唐突にバルタザールという言葉が出てくるのは、おそらく運び屋の原題のミュールと、次項で書かれるドライヤーに近しい作家のブレッソンという連想なのだろう)。

不覚にも川辺にみんなが待っているシーンでは号泣状態となる。

ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション [DVD](ダニエル・ウォレス)

妻曰く、ティムバートン固有のグロテスクが、普通のきれいな家族映画と信じがたい巧妙さで融合した大傑作。その通りだ。

_ 奇跡

シュレイダー(ポールのほう)の映画に行こうという話になったところで、妻がドライヤーの映画を予習のために観たいというような話になる(あとで、ほぼ勘違いとわかる)。

ドライヤーなら主要作品は大切にDVDで保持しているぞ? 知らんのか。ということになり、押し入れの奥の聖地から、聖杯を取り出し、これまた封を切る。

そして奇跡を観る。

なんか妻が身構えているので説明する。

この作家は、一見すると岩波映画っぽく見えるが、それは勘違いだ。

悪魔とドライブという短編でその特徴を知り抜いたが、くそまじめなテーマ(悪魔とドライブの場合は、危険運転をやめようという交通安全キャンペーン)を映画という娯楽メディアで表現可能な娯楽性を徹底的に追及してフィルムに定着させる能力を持つ信じがたいエンターテイナーなのだ。

その意味ではブレッソンに似ている。

違うのは、ブレッソンは本人は岩波映画を作るつもりで信じがたい娯楽作品を作ってしまい、しかし本人は現物を観てなお超高尚な文芸作品のつもり(それはもちろん一面の真実ではある)なのだが(だからこそ信じがたい)、ドライヤーは映画とは何かを知り抜いた末で映画として(娯楽作品として)作っている点にある。だから、身構える必要は全然なく、その意味においてはティムバートンや宇宙人ポールと変わらない(が、題材はくそまじめ)。

で、おれも奇跡は初見なのでわくわくしながら観始める。

いきなり兄が丘を登るのを見た弟が父親を呼びに行く。ここだけで滅法おもしろい。

カメラが信じがたい回転をして、兄嫁の登場。映画じゃん。

どのカット、どのシーン、すべてが素晴らしく、まったく時間軸と現実の時間軸が無関係に流れるのがすごい。

全体が左上に斜め線が入る構図の中に、右から兄嫁が入って来て中心の親父にもたれる。親父の右側の頭、型、腕の線は最初の斜め線を形成しているが、左の線は陰に埋もれている。

その構図が崩れて右側に大きな三角形が配置される。しびれるほど美しい。

なんでこんな映画が作れるんだろう?

仕立て屋の家に直談判に行く。信じがたいカルト集会が開かれていて、演説も自分たち以外は地獄落ちという話をしている。全員、目が往っている。映像だけで示されている。通されて、奥へ進み、右側のソファで待っているのと左側の集会が映される。おもしろい。

新任神父が家にやってくる。ヨハネスしかいない(というか、この3兄弟、2番目が宗教家、1番目が俗物(というか普通の社会人)、3番目が無垢なる精神からようやく脱却したところ、ってもろカラマーゾフの構造だ)が、まったく噛み合わないのに、見事に噛み合った会話が交わされる。面白過ぎて笑い出さずにはいられない。このおもしろさこそ本質だな。

子供だけがヨハネスを信じていることが示される。椅子を使って背の高さを解消。

右側に寄った位置で仕立屋が聖書を音読している。右の頬を打たれたら…… いきなり霹靂が青天を走りまくる。おれは間違っていた! むしろ前回登場時には結婚に賛成のような様子だった妻のほうが引き留め役に回る。

で、まあ、奇跡が起きるのだが、ここでのヨハネスの構図と台詞の素晴らしさ。それに対する神父と医者の居心地の悪さの表現。当然奇跡は起きるに決まっているのだが、にもかかわらず息を止めて凝視せざるを得ない。なんでこんな映画が作れるんだろう?

すべてが最高だった。

カール・ドライヤー傑作選 [DVD](カール・テオドール・ドライヤー)

あー、せっかく取っておいたこの世の楽しみの一つが空いてしまったのだなぁ。


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