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日々の破片

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2018-06-14

_ 世界の誕生日

アーシュラ K ル グィンが死んだが、考えてみれば、読んだことなかったので何か読んでみるかと聞いてみたら、とりいさんからゲド戦記か闇の左手、とお勧めされた。

ゲド戦記はジブリので観たからパスと言ったら、ばかもの別物じゃと言われたけど、そうは言ってもどうせならまったく知らないほうが良いので、闇の左手を読もうとしたら、まだKindle化されていない。

闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))(アーシュラ・K・ル・グィン/Ursula K. Le Guin/小尾 芙佐)

紙の本は岩波文庫の場所しかないので、こうなったらなんでもいいやと見てみたら、唯一『世界の誕生日』だけがKindle化されていたので買った。読んだ。えらく時間がかかった。

おもしろかったかといえば、少なくともワンダーというよりも異物感というか猛烈な居心地の悪さというかがすさまじくあった。あり過ぎて読むのに時間がかかりまくったのかも知れない。

というか、ニュートラルな固有名詞(人名、地名、種族名、都市名、事象名、事物名、星名、なんでもかんでもだ)がばんばか出てくるのに、Kindleだと確か20ページほど前に出てきたような気がするが、あそこではどういう印象を主人公は持ったっけ? とか紙の本なら数秒でわかることが永遠にわからない(検索すりゃいいじゃんというのはでたらめだな。検索が0.1秒でできるのらともかく、手順が多すぎて、思考の流れが完全に切断されてしまって話にならない)のでいちいち暗記しながら読まなければならないのが大問題だったようだ。

やっぱり現在のテクノロジーでは、紙に対する印刷が最強だと完膚なきまでに思い知ったが、それはそれこれはこれ。

という、読書スタイルを確立するまでの作品はしたがってあまり印象がないというか、どちらかというとろくな印象がない。

・愛がケメルを迎えしとき(1995年、読んでいる間は発表念を気にしていなかった、今、記録として掘り起こしている)

事象を次々と忘れながら読んでいたため、全然記憶にない。えらく退屈だったような。

・セグリの事情(1994年)

少し読み方がわかってきたのだが、異様にヘヴィーな作品で死ぬかと思った。

・求めぬ愛(1994年)

慣れた。さらに異様にヘヴィーな作品で死んだ。

・山のしきたり(1996年)

求めぬ愛の世界の続きなので楽しめた。が、さらに異様にヘヴィーな作品で生き返った。が、これは一連の作品の中でも新しいだけに、骨格以外の肉付けがある(そこが物語性となって読みやすくなっている)のだなと今、年代を入れて気づいた。

・孤独(1994年)

おもしろい。が、異様にヘヴィーな作品でまた死んだ。

・古い音楽と女奴隷たち(1994年)

おもしろい。クッツェーの夷狄を待ちながらみたいだなと思いながら読んだ。辺境におかれた文明人が内乱に巻き込まれて文明性を完膚なきまでに抜き取られても残る意志、政治と人間の対立、冒険、そういった要素に共通点があるからだ。という意味において、20世紀末期の文学に通底する問題意識を掘り当てたので純粋に楽しめたのだと思う。(作家の腕前が上がった可能性も高いと思ったが、年代を見るとそうでもない。扱うテーマの違いによるものかも知れない)

夷狄を待ちながら (集英社文庫)(J・M・クッツェー/土岐 恒二)

・世界の誕生日(2000年)

引き続き、呪術的文学作品。抜群におもしろい。というか、作家の腕前は明らかに上がっているだろう(年代的にも正しい可能性がある)。

・失われた楽園(2001年)

見事なSF(スペキュラティブなだけではなく、味付け的にも、という意味で、他の作品もすべてスペキュラティブではある)作品。おもしろい。

世界の誕生日 (ハヤカワ文庫SF)(アーシュラ K ル グィン/小尾 芙佐)

前半の作品群を読んでいて想起しているのは、クッツエーではなく沼正三で、異様なまでにセクシュアル(社会学以前に生物学的特徴が最重要視されているのでジェンダーではない)な物語群なのだが、片や倒錯した理想郷(なので好みは別としてエロティックである)、片や突き放した(まさに異星人の目による)単なる叙述(なのでセクシュアルではあるが、これっぽっちもエロティックではない)と、同じような世界を描いてもこうまでも違うのかという興味深さもあるが、それよりもなによりも、読んでいて感じるのはとんでもない違和感で、もしかすると、それは強制される異物感かも知れない。と考えるとワンダー以外のなにものでもない。構築力といい説得力といい大した作家だ。想像なのだが、ここでおれが得た異物感が日常というのがジェンダーなのだろう。

・1970年代初頭くらいの知識ではセクシュアリティを主題にしたSFというのはファーマーくらいしかいない(そもそも子供用ジャンルなので、主題にしないという不文律があったのをファーマーが打破した)ということだったのが(実際には60年代後半からSFがジャンル小説から文学の領域に入ったので、そんなことはなく、10年遅れの知識だったわけだが)、どえらく進化して深化したことそれ自体がワンダーだ。

恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)(フィリップ・ホセ・ファーマー/伊藤 典夫)

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ ムムリク (2018-06-22 20:39)

闇の左手。読んではいるのですが、もうすっかり記憶の彼方です。ファーマーの「恋人たち」も懐かしく思うのですが、実は未読です。「去年を待ちながら」(P.K.ディック)と空目。とりとめなくてすみません。

_ arton (2018-06-23 07:43)

去年を待ちながらもおもしろいですね(夷荻を待ちながらは分析的にはおもしろいけど娯楽的にはそれほどおもしろくはない)。


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