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日々の破片

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2016-04-26

_ 帝国劇場で1789

子供が最近宝塚も見始めて、1789というフランスのミュージカル(の宝塚版を観たというわけだ)がなんかモザールみたいだからお前も好きかも、観ろといってDVDを渡してきたので観た。たしかに節回しが実にそれっぽい。

月組宝塚大劇場公演 スペクタクル・ミュージカル『 1789 ―バスティーユの恋人たち―』 [DVD](宝塚歌劇団)

で、調べたらなんのことなくモザールの作者グループの作品だった。ちょっと宝塚版だと地のセリフの抑揚が好きになれないので元ネタを買って観るとなかなか楽しい。

3 grands spectacles?: 1789, les amants de la Bastille + Mozart, l’opera rock + Le Roi Soleil(-)

(PALだからそこだけはやっかい(家のREGZAは再生してくれない)だが、ふつうにコンピュータで見れば観れる。モザールは持っているのでamazon.frで1789と太陽王を買おうとしたら太陽王は日本への輸出不可となって買えない。ふと見たら3本セットが1789単体とほぼ同じ価格でしかも太陽王が入っているのでそれを買った。しかしamazon.co.jpでも売っていたのか)

特にダントンが子供(たぶん浮浪児)と一緒にパレロワイヤルで歌うところが好きだ。

宝塚版のセリフをちゃんと聞いていなかったが、オリジナルは耳の悪い人用に(ミュージカルだけどそう書いてあるからそういうことなのだろう)字幕が出るのである程度までは話はわかった。

飢饉で税を納められなくなった農民を軍隊が襲い主だったものを見せしめに連行しようとする。主人公の青年、ロナンが皮膚の下がどうしたとか歌いながら抵抗するもので軍隊が発砲する。止めようとした父親が撃ち殺される。ロナン怒ってパリへ出奔と、ちょっとだけカムイ伝みたいな始まりである(1788年だからこちらも天明の大飢饉で同じような話はごろごろある)。

一方、ベルサイユではすべては賭博とマリーアントワネットが歌って踊っている。

そのころパレロワイヤル(オルレアン公による開放後)をダントンが子供を連れてうろうろしている。

そこにデムーランとなぜかロベスピエールが合流して自由だのなんだの言っているところにロナンが登場してきてひと悶着あったあとに仲間になって、マラーの印刷所で働くことになる。

一方マリーアントワネットは長男が病弱なのが唯一の気がかりだが、歩けるように指導した養育係のオランプを気に入って腹心として扱いはじめる。当然、そのオランプがパレロワイヤルでロナンと出会って愛し合うようになって物語は進むのだった。

オリジナルのDVDは短縮しておさめてあるのか、逆に宝塚版が尺を長くするためにエピソードを加えまくったのかオリジナルには出てこないアルトワ伯が日本版では圧倒的な悪役として出てくる(歴史的にも反動の権化で、ルイ16世とネッケルの融和政策に反対したり兵隊を送ってバスティーユ襲撃のトリガーを引いたわけで正しい。あと、オリジナルのルイ16世はほとんど姿を現さないが(3部会の閉会を宣言する場はある)、宝塚版では史実通りにギロチンの刃の改良案を出したりしている)。

で、ロベスピエールがテニスコートで踊ったり、ロナンの妹がパン屋を襲撃したり(天明の打ちこわしで江戸と大阪で米屋が打ち壊されたのとまったく同時期)したのちにデムーランがバスティーユへ民衆を導いていく。

新装版 パン屋再襲撃 (文春文庫)(村上 春樹)

(この本読んで夜中にパン屋を襲撃に行こうと妻と画策したことを思い出した)

バスティーユの武器庫を守っているのはオランプの親父というご都合主義のおかげでロナンは無事扉を開けることができる(オリジナルの親父は赤ら顔の酔っ払いみたいな感じだが、宝塚版はなかなかきりりとした良い親父で、このあたりの人物像の変え方は興味深い。そういう意味だとオリジナル版はロベスピエールが黒髪巻き毛なのが、帝劇版だとダントンがまるで大槻ケンヂみたいな黒髪巻き毛の大男でロベスピエールが金髪イケメンといろいろ雰囲気が異なっておもしろい。デムーランはデムーラン。ミラボーとネッケルは近いものがある)。

最後人権宣言を読み上げておしまい。

もしロナンが元気に生きていたら、エーベル派になってろくなことにならなかったんじゃないかとかいろいろ考える。

というわけで、帝劇で宝塚版をもとにしたミュージカルやるから観ようと子供に言われて行ってみた。

ダントンと一緒に出てくる子供が本当に子ども(プログラムをみたら小学4年生と書いてあった)で驚いたがえらくうまいのにはもっと驚いた。オリジナルだとイエイエイエイエと歌うだけなのに、ちゃんと言葉がある歌を歌っているし。ロナンの妹がうまい。

で、カーテンコールの直前に手を振ったかと思うと2度と出てこない。ふと時計をみると9時なので、子役の就業時間規制かと気づいた。以前は6時までで、おかげで3人の童子を子供にやらせる魔笛はマチネしかできなかったとかいろいろきいたことはあったが(さすがに6時は無理があるということで9時になった)、目の前でそれが起きるとは思わなかった。

どうもロナンが小僧過ぎるのとセリフ回しがやたらと荒いのでなにをいきがっているんだ(そういう役回りなので合っているとはいえるけど)という感じだったが、出てくる役者がみな歌も踊りもうまくて楽しめた。特に踊りは(テニスコートのロベスピエールのところに限らず、マラーの印刷所にしろ、パレロワイヤルにしろ)実際に舞台で動いているのを観るのは実に楽しい。ただ、スピーカーの音が良くない。平面的な音響なので歌が録音に聴こえるところすらある(が、実際に歌っているのは間違いなさそうだ。本当の録音らしき合唱が入ると、それよりは厚みがあるからだ)。

同じように飢饉があって打ちこわしがあったりしたが、彼我の違いは田沼意次という大政治家の存在にあるのかなぁとか(1789年にはテロリストに暗殺されてしまっていたが)。


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