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日々の破片

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2009-07-28

_ ベーコンを読んでみたり

なんとなくノヴム・オルガヌムを読み返すと、400年近く前に書かれたとは思えないようなことが書かれていて、鼓舞されるよりもむしろ暗然たる思いにとらわれるのだが、にもかかわらず、60歳くらいになって発表しているということ(20代のころに下書きしてたらしいが)に、力づけられないこともない。

にしても、序言ひとつとっても、色あせないことはなはだしい。いかに、人類の歩みというものがゆっくりとしたものかということでもある。

たまたま或る一人の大胆な知能をもち、かつ方法の簡潔のゆえに人々に迎えられ好評だった人が出現し、外見上或る技術を作り出し、実際上は昔の労作を駄目にしてしまったからである。ところがそうしたことは、労作の安易な使用と新たな探求の嫌悪およびもどかしさのゆえに、後の人々に感謝されるのが常なのである。

というたぶんアリストテレスについて語ったことは、まるでビルゲイツについて語っているかのようであり、かといって

ところがもしここに人あって、他人の意見にも自己の意見にも縛られず、自由を愛して、他人も自分とともに研究することを欲する気持ちであったとしても、なるほど彼らは心情的には立派だけれども行動的には力なかった。というのも彼らは単にもっともらしい理由を求めてきたように思われ、かついろいろな論拠の渦に振り回されて、どうでもよい研究の自由によって、探求のきびしさを骨抜きにしてしまったからである。

あるいは、

そしてさらに経験の波浪にあえて立ち向かって、ほぼ職人的に慣れてしまった若干の人々も、やはり経験そのものの中で何か手探りの探求を行い、確かな法則によって経験に仕えることをしない。いやさらに大多数の人は、何か1つの発見を掘り出すことができれば大したことだと考えつつ、つまらない課題を自分の仕事にした、こうした狙いは不手際でもあれば貧弱でもあるのだが、というのも何びとも或る事物の本性をば、そのものの中だけは正しくもしくはうまく探求し尽くせないもので、多くの実験を骨折っていろいろ変えてみた後にも静止することなく、さらに先に進んで問うべきことを見出すものだからである。(この後の投光的実験でなく成果的実験をしやがりやがってのような個所は痛烈だが面倒になったのでここでおしまい)

なんとなくikegamiさんが言いそうなことでもある。(追記:なんかすみませんというのが偽らざる気持ちではあるが、こう返してくれるというだけで、おれは好きだなぁ。ありがとうございます。ベーコンに戻ると全巻序言からひとたび本文序言に入るや、「精神の予断」と「自然の解明」どっちもありなんだからまあいいじゃん、でもおれと一緒に後者の道を進む人も出て来いよ、と言いだして、まあそのあたりも含めて。知は力の知は多分前者)

で、ヴェルラムのフランシスことベーコンは、帰納法について説き、

ところで今や、自然解明の技術そのものを提示する時である。その中で我々は最も有用で最も真正な法式を説いたと信ずるけれども、しかしそれに絶対的必然性、もしくは完全無欠を認めたわけではない。というのも我々は次のような意見だから、すなわち、もしも人々が正規の、自然および実験の誌を現にいま持っていて、それを熱心に研究しかつ自分を二つのことに仕付けて、1つには在来の意見および概念を取りのけ、二つには精神をば、最も一般的なものおよびこれに近いものから、一時遠ざけることができたとしたら、人々は精神の固有のかつ生まれながらの力でも、何ら他の技術なくとも、我々の解明法式に思い付きうるはずなのである。

と、筆をいったん引っ込める。

にしても、すでに帰納法を学んで400年になるのにもかかわらず、相変わらず序文でベーコンが嘆いたあれやこれやが大して変わらない(もちろん、はるかに前進はした位置にはいるということは間違いのないことであるが)ということは、不思議なことでもある。

ノヴム・オルガヌム―新機関 (岩波文庫 青 617-2)(ベーコン/桂 寿一)


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