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日々の破片

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著作一覧

2005-11-24

_ 登極せし者は則ち王

始皇帝―中華帝国の開祖 (文春文庫)(務, 安能)

秦始皇帝(もっともこの時点では秦王政)は、前の秦王の実子ではなく宰相呂不偉の子供であった(公然の秘密というやつだ)。それでいろいろ陰謀や策謀が巡らされる。まだ、少年の秦王政もいろいろ悩まないわけでは無い。もし風説が事実ならば血のつながりはない弟が本当の王かも知れない。実際に弟を真の王として秦王政に対してクーデターを図る動きもある。それが大義なのだろうか? いったい、自分は真に秦の王なのか?

そこで賢人の蔡択が教える。「登極せしものすなわち王」

近代(2500年前かどうかはあまり関係ない)の法によって成り立つ国家においては、正当な手続きを経て王位についたものはその出自がなんであれ、それが正当な手続きを経た(法に則っている)というその1点において何の問題もなく正統な王である、ということだ。Y染色体がどうのとかはまったく関係がない。

エロスを介して眺めた天皇は夢まぼろしの華である―御落胤と偽天皇(玉川信明)

アナアキストの玉川氏のまとめた微妙な(いろものっぽいものが多分に含まれているのだが、蜂須賀家の娘のエッセイとか滝川博士の解説記事とかまともなものが無いわけではない)色彩を放つ御落胤や南北朝のあれこれについての本である。

何度か北朝天皇家には血筋がどうした関係の危機があった。おそらく最大の危機は南朝の系譜をひく(と自称する)熊沢天皇らしい。なぜならGHQもからんだ戦後の国家体制の見直し中のことだからだ。

既に明治時代に、南北朝時代については南朝を正統とするという形で決着が着いている。足利尊氏は逆賊で、楠正成は忠臣というやつだ。これについては大逆事件の時に一躍クローズアップされた問題であった(文部省の責任が追求され第2次桂内閣が教科書問題の責を取って総辞職するという結果になった)。この問題の結論は、当初は南朝が正統ではあるが、後小松天皇(北朝)に後亀山天皇(南朝)が正式に譲位したのでその後は北朝が正統というものだ。実際にはこの譲位自体が怪しげなものだったために後南朝問題という形でしこりが延々と残ることになるわけだが(それにしても長祿の変は無道だ)、それが怪しいかどうかは正式な手続きを踏んでいるかどうかに比べれば瑣末事項だ。則ち正式な皇位継承の手続きを経て登極せしものすなわち王。

その意味で熊沢がGHQに訴えたというのは興味深い。その時点で正式な手続きを特権的に持つ法としてGHQを想定したのは良い着眼点だ。

いずれにしても、これら古き時代においても、なぜその時点で今の天皇が天皇なのか? という疑問に対しての結論は、それが登極したからだ、という点にある。逆に言えば明治時代に南朝が正統であると決めたのも、それが正規の手続きを踏んで登極したのが南朝の側であり、北朝はどさくさまぎれに正規な手続きを経ずに天皇となったという点が問題なのである(正確には後醍醐天皇は北朝の光明天皇に譲位しているのだが、偽の3種の神器を渡しただけだから光明天皇は正規の天皇ではない、ということらしい。でも元々の3種の神器は少なくても安徳天皇といっしょに壇ノ浦に沈んだはずだから偽とは一体なんなんだか不思議な話でもある)。

結論は、単純。染色体や血は関係ない。それが正当な皇位継承の手続きを経たかどうか、だけだ。

それにしても、

熊沢天皇がこの隠れたる後南朝の史実を指摘したことは正しい。しかし、それ故に、南朝の後胤に皇位継承権があるというのはおかしい。日本国憲法において世襲の天皇というのは、明治天皇の後子孫を意味するのであって、「万世一系ノ天皇」の語は既に省かれている。

と喝破した滝川政次郎博士が昨今の議論を見たらどう考えるだろうか? なんで今頃になってまた血を(Y染色体と装いは変えてはいるわけだが)持ち出すんだろう?

追記:応仁の乱も最終的に西軍は南帝を担いでいたりするのだが、子供の歴史の教科書を見てもそのへんは見事に無視して単に細川と山名の政争ということにしている。相変わらず後南朝というのはタブーなんだろうか(単にややこしいだけとも)? 多彩なり室町時代、豊かなリ室町時代。子供の頃、歴史年表上では結構な長さの室町時代なのに、鎌倉時代−建武の新政まではそこそこ詳しいのに、急に御朱印船貿易、金閣寺、銀閣寺、信長が出てきて楽市楽座でまた詳しくなる、と室町時代がすっ飛ばされるのが不思議だったのだが、それだけに興味深い時代ではある)

_ チュートリアル続き

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これで1枚分か。後、3枚は週末あたりの予定。


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