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妻とパルコのホワイト映画館にキムズビデオを観に行く。
暑いから最初は白一の生アイスを食べる。
実に奇妙な映画で、これまたドキュメンタリーと妄想が一緒になったような作品だった。
レンタルビデオ屋を経営するキムさん(韓国から渡米した立身伝の人)が世界中の映画祭に送り込んだスタッフが届けるビデオ(NTSCやPALの違いってVHSの場合はどうなっているんだろう?)や、大使館から取り寄せたビデオをダビング(文化部が貸し出しているのだろうが、ダビングして商用利用して良いとは思えないなぁ)したりして作り上げた壮大なビデオコレクションを、世の趨勢に合わせてレンタルビデオ店を廃業するにあたって、コレクションをレンタルするという条件でコンペを開く。そこに名乗りを上げたイタリアはシチリア島の市に寄贈したのだが、その後の音沙汰がない。
そこで、キムズビデオ長年の愛好家であったこの作品の作家がシチリアを訪問する。英語とスペイン語、ちょっぴりフランス語しか喋れないので、全然話が通じないが、入れ物はロマネスクかな? の美しい石造りの建物が所蔵庫とわかる。が入れない。入れないのだがうろうろしていると、鉄柵に鍵がかかっていないことに気付き、中に入る。と、とにかくコレクションは放置されてひどい状態となっていることだけはわかった。指でビデオの上をなぞる(多分、積もった塵を拭うというシーンなのだろうが、映画としては別に塵は積もっていないような。どこまで現場撮影なのか後から再現したのかわからん)。
・平積みされているのが大量にあるのだが、たしかVHSは平積みするとだめなんじゃなかったっけ?
キムズビデオの取得に名乗りをあげた当時の市長はどうも落下傘候補で、地元の票を集めるためにコーザノストラの力を借りたらしい。で、その件で次期は落選してしまい、そのどさくさでコレクションは有耶無耶になってしまったらしい。しかもその後はちゃっかり国政に戻っていて知らん顔をしているので、この映画では最大の悪役となっている。
作家は同時通訳を雇ってこの後なんどもシチリアに足を運び、ビデオ奪還作戦を開始する(このあたりから妄想の世界となる。紙に映画作家の顔写真を印刷した仮面をかぶった人間たちがビデオをコンテナに積み込みニューヨークへ運ぶ)。
最後、キムさん(別の事業に忙しいので、ビデオはどうでも良くなっているっぽい)に了解を得ようとする。
どうやって奪還したんだ?
ヒッチコック、チャップリン、ゴダール達に運んでもらいました。
それなら神の意思ということだな。OKだ。ゴダールは神。
途中、いろいろコラージュが入る。チャップリンの無声映画時代の短編はともかくとして、ほとんどが80年代以降の映画で、ああ、この作家はおれと同時代人なのかと気づく。ニューヨークが舞台だがリキッドスカイは引用されていない。最初、パリステキサスのトラヴィスが映る。ポルターガイストとビデオドロームがいずれも上手がテレビでテレビと交感する人間が下手というのがおもしろい。ツインピークスもなんどか。ブルーベルベット冒頭の不穏さ(草むらで耳をみつける)などなど。
キムズビデオに作家が最初に足を運んだ時の状況、という名目でキムズビデオでギグが行われているフィルムが入る。なんとなくテレビジョンっぽい。ビデオとブラウン管(ポルターガイストとビデオドロームもそうだ)。
ゴダールの映画史をめぐってキムズビデオに対してゴダールが訴訟を起こしたことも語られる。おそらく映画史もコラージュの塊だから、ゴダールはちゃんと許可をとっていなかったのかも知れない。そのため本はあってもビデオはなく、海賊版を元に引用元から訴訟を起こされるのを回避するために訴訟したのかも知れないなぁとか考える。
なかなかおもしろかった。
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