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妻とアマゾンプライムビデオでキアロスタミのトラベラーを観る。初見。
パーレビー時代の1974年の作品で、キアロスタミの処女作らしい。が、最初からキアロスタミはキアロスタミだった。完璧な構図、ドキュメンタリーとフィクションの曖昧な境界(役者なのか素人なのか区別がつかないが、おそらく一番の差は台詞回しなのでアテレコをやりまくっているのだとは思う)、底意地が悪い(=徹底的なリアリズムの)視線、で小学生が学校をさぼってテヘランや大好きなサッカー選手の試合を観るための金策と旅行について描く。
それにしても『トラベラー』というタイトルは、おれにはタイムトラベラーの印象が強いからだとは思うが、もっと異次元な世界の旅行を考えてしまうのであまりしっくりこない。とはいえ、『旅行者』(大人のイメージじゃん)も違うし、厄介なタイトルだ。
とにかく大人視線で観るから、主人公はくそばかで強情な子供なので、やることなすことすべて悪い方向悪い方向へと転がり落ちて行く(そもそもテヘランからどうやって故郷へ帰るんだ?)とてつもないひどい物語だ。
チケットを買おうとすれば予定調和で、行列の目の前の客で売り切れる。
映画的視線のうまさは、母親が絨毯の下に隠した金の流れや、サッカー場の様子(最後の寂寥感がすさまじい)に表れている。
どうしてキアロスタミはこういう映画を撮れるのだろう?
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