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日々の破片

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2024-02-23

_ 隠し砦の三悪人

NHK BSで録画しておいた隠し砦の三悪人を観る。

最初は落城した秋月(兜の山中鹿之助みたいな三日月が異様に印象的な蜘蛛巣城主に続いて、またもや三日月マーク)の落ち武者(ではなく寄せ集めの足軽の農民らしい)の藤原鎌足と千秋実が漫談しながらうろうろするところから始まる。と、そこに髪の毛ざんばらにした落ち武者登場、瞬く間に追っ手の騎馬武者達に仕留められる。が、首級を挙げないので、なんじゃこりゃと思う。訳分らん。

薪に火が点かないことから鎌足と実は秋月城の隠し軍資金の存在に気付き一山当てようとたくらむ。

そこに、超半ズボンというか食い込み系パンツを履いた三船敏郎登場。というか、出てくるだけで思わず笑いたくなるほど、良い登場シーンだし、三船敏郎がうろうろするだけでおもしろい。こんな役者は確かに勝新太郎くらいしかいない。

さらにどう見ても秋月のお姫様(金10枚の賞金首)が登場。これまた野生児のような半ズボン。

台詞回しは拙いが、上から下まで見事な女優で驚く(上原美佐という人。数年活躍したが自分の才能に見切りをつけてやめたらしい)。セリフ回しが拙いからか中盤以降は唖として振る舞うように申し付けられる。

唖ということは聾だということで、鎌足+実がギャグをかましたりしながら、隣国への脱出行が始まる。

おもしろいはおもしろいが、観ていて、なるほどこれが七人の侍で批判されまくった黒澤明の農民蔑視観かと得心がいった。

何しろ、敵方含めて三船敏郎、上原美佐の武士側と、実・鎌足の農民側の行動パターンに対して執拗なまでに落差を描く。それがあまりにもしつこいしつこい。しかも、その落差を描くことで映画としておもしろさが向上すると考えているが丸わかりなのだった。あまりにもしつこいので観ていてうんざりしてくる。

側を分けて描くといえば白土三平の諸作品も同じだし、当然農民が小狡かったり全然だめだったりするわけだがここまで妙な印象を受けない。どうにも黒澤明の描き方は観ていて引っ掛かる。今様に言えば上から目線というか、あくまでも高いところから見下ろす武士(そういえば、最初の登場シーンから三船は鎌足・実を見下ろす構図がやたらと多い)という線を一切崩さないからだろうか。

隠し砦の三悪人(三船敏郎)


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