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日々の破片

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2018-01-18

_ 低レベルプログラミング

翔泳社の野村さんから低レベルプログラミングをいただいたのでレビュー(完全に読んだわけではなく、自分および少数の購買予定者のためのアジェンダ用にレビューしたというところ)。

著者はレニングラードの(こんなところで懐古趣味をひけらかしてもしょうがないが、そういう性格だからしょうがない、つまり聖ピョートルの都市のことだ)ITMO(と書いて国立情報技術機械光学研究大学、らしいのだが光学って本当なのか工学の誤記なのか謎)の先生で、多分、この本は副読本なのではなかろうか。どういう先生かというと、この先生のチームは、ACM-ICPCの国際大学対抗プログラミングコンテンストで6回優勝しているそうだ(少なくとも2017年の優勝は間違いない。というか3位は京城、7位が北京で、東京が12位なのか。韓国もすごいな)。

本書の目的がまえがきにある。7つの目標だ。

・アセンブリ言語で自由自在に書くことができる

・Intel 64のプログラミングモデルを理解する

・C11で、保守が容易で堅牢なコードを書ける

・コンパイルのプロセスを理解し、アセンブリリストを解読できる

・コンパイルされたアセンブリコードのエラーをデバッグできる

・適切な計算モデルを使うことで、プログラムの複雑さを大きく減らせる

・性能が重視されるコードを書ける

おお。少なくとも3は自信がないし、7と8は知りたい。

というわけで、なるほどACM-ICPCで優勝しそうな内容だ。

問題ががんがん入っていて、解答はGitHubにある(英語ですと書いてあるが、Apressの本だからロシア語というわけはないよなぁ)。

レポジトリには、すぐに使えるDebianのVMXへのリンクがあるので、すぐに実習ができるとのことだ(VMWareがあれば)。というか、これはうまい仕組みかも知れないと思った。

目次を見ると全体は4部構成。

1部はアセンブリ言語とコンピュータアーキテクチャ。

レジスタ、プロテクションリング、ハードウウェアスタック。なぜか10ページを使ってレガシーとしてリアルモードとプロテクトモードなどを説明、仮想メモリについていろいろ(効率とかメモリマップトファイルとか)、コンパイル処理、割り込みとシステムコール、計算モデルとしては、有限状態マシン、Forthマシン(スタックマシンのことだよな?)で、課題としてForthコンパイラとインタープリタ。はて、なぜこれが計算モデルの章なのだろう。

2部はプログラミング言語C。

基礎、型システム、コードの構造、構文のセマンティクスとプラグマティクス(意味と実際、なのだが、実際? 実態ではないのかなぁとか思う)。唐突にアラインメントの話。

そして良いコードを書くにはとして、選択、カプセル化、不変性、アサート、エラー処理、メモリー割当、柔軟性など。C11で。課題として画像の回転と、カスタムメモリアロケータ(これは面白そう)。

3部はCとアセンブラの間。

変換処理の詳細。つまり関数コールのシーケンス、volatile、非局所ジャンプとsetjmp、inline関数、restrictポインタ……(最適化の変換処理のことか)

共有オブジェクトとコードモデル。この章は再配置とPIC、GOTとPLT、プリローディング。どうでも良いけど、章題と実態がおれの感覚とはずいぶん違うな(これまでのところもそうだ)。

性能。最適化、キャッシング、SIMD、SSE/AVX。

マルチスレッド。難しいのはなぜか? 実行順序。強弱メモリモデル。volatile、メモリバリア、pthreadsの紹介(?)、セマフォ、Intel64の強さについて。ロックフリー。C11のメモリモデル。

付録。gdbの使い方。makeの使い方。システムコール(read、write、open、close、mmap、munmap、exit。性能テストの情報。参考文献。

520ページほど。

1部はどちらかというとトピックの紹介。アセンブリのリストはある。

たとえば有限状態マシンでは、最後に正規表現のNFAによる説明が2ページほどあって、問題117「よく知っている言語を使ってgrepに似たプログラムをNFAの構築によって実装してみよう。参考情報:Russ Cox. Regular expression matching can be simple and fast (2007)

という感じ。

一方、Forthはそれなりの長さのサンプル実装(アセンブリ)を示してForthマシンを説明している。課題はForthインタプリタの実装(当然、アセンブリ。sete、setl、setz、cpo。呼び出し先の退避にはr13,r14,r15を使え。ということからx64の話とわかる。自信がなければGforthでしばらく遊べ。

1部が150ページくらい。

2部がC11。セマンティクスのところは後でちゃんと読む(ぱっと眺めたところ、おれはちゃんと理解していない(知識として言語化されていないという意味)ことがわかった)。プラグマティクスの意味(言語仕様外だが、プログラムの振る舞いに影響するもの)。アラインメント、パディング。

13章の良いコードを書くには、は、ソフトウェア工学の話になるようだ。

3部。

変換処理:calling conventionの概念を再考して理解を深め、コンパイラがソスコードをどのように変換するかを詳述。

保護機構として、スタックに埋め込むセキュリティクッキー。アドレス空間のランダム化(なるほど)。DEPはわかる。

共有オブジェクト:ELFを思い出そう。から始まる。ffiの世界だ。

性能:高速化の神話。性能テストは特殊化されているし。プロファイルをしろ。コンパイラ作者はばかではないというか鬼のように賢いから、みんながよく書くコードパターンが恐ろしく最適化されている。手作業で最適化するのは不健全(コードが読みにくくなるし、保守は難しくなる)

まず、アルゴリズムの選択が重要。

具体的なコンパイラの戦略:スタックフレームポインタ省略。末尾再帰。共通式の除去。定数伝播。戻り値の最適化。分岐予測の影響(お、おう)。このへんまではわかる。実行ユニットの影響。リード・ライトのグループ化、わからん。後で読む。キャッシング、プリフェッチ。なんでプリフェッチのところでバイナリーサーチが出てくるんだ? メモリアクセスパターンが予測困難だから。valgrindのcachegrindモジュールを使って調べる。プリフェッチによってLast Levelキャッシュのミスが改善されている。なぜだ?後で読む。

キャッシュバイパス。巨大行列のアクセスでいかにシーケンシャルにアクセスするようにするか。ここでもvalgrind。

この章はおもしろい(しろそう)。

マルチスレッドがどう難しいか。

C11のメモリモデル。弱い。アトミックのサポート。メモリオーダリング。問題407:ミューテックスがあるとき、なぜ条件変数が必要なのか。問題408:メモリオーダリングでIntel64が保証するのは何か。といった問題が並ぶ。

付録。gdbってemacsで実行するのだと思っていたら(というか、そうやって実行しているのだが)、自分のXのGUIを持っているのか。知らんかった。

makeの説明はなんで? というレベル。

システムコール。

システムコールをアセンブリで発行するのは簡単だ。対応するレジスタを正しいパラメータ値に初期化して、syscall命令を実行するだけである。

そりゃそうだ。

低レベルプログラミング(イゴール ジルコフ/Igor Zhirkov/吉川 邦夫)

というわけで、すごくまっとうな本でした。


2018-01-05

_ ストーミーウェザーと有頂天時代(その顔は黒いか)

どちらが先かは記憶が定かではないが、多分、ストーミーウェザーが先だと思う。

ストーミーウェザーは、僕の記憶では、第二次世界大戦中に、米軍の黒人兵のために、彼らを慰問するために作成された映画だ。それまでハリウッドのコードでは、召使いと奴隷以外の役回りで黒人を出演させることはなかったのが、黒人兵に対する慰問という大命題のおかげで、初めて黒人が主演で黒人がほとんどの重要な役を占める映画として作られた(はずだ)。

記憶では、ボージャングル(ビル・ロビンソン)の一代記になっていて、蒸気船の小僧として雇われたボージャングルがタップの才能を認められてショービジネス界に君臨するまでを描いていた。途中、キャブキャロウェイがズートで歌いまくり踊りまくったり、タイトルのストーミーウェザーはリナホーンが歌うのではなかったかな。一度聴いたら少なくとも冒頭のストーミウェザーのザーの下降ジャンプは忘れることができない名曲だった(というか覚えているのだが、キャブキャロウェイも歌っていたような記憶があるのは何だろう)。

なぜかわからないが、蒸気船の小僧として雇われたボージャングルが、他の船乗りに言われてタップを踏むシーンは記憶に残っている。一通りタップを踏むと、相手がwell educatedな足の持ち主だ! と誉めるのだが、そのwell educatedという言い回しが気に入ったからだと思う。

このある時代を見事に切り取った傑作映画は、僕が確かユーロスペースで観るまで、日本では公開されなかったいわゆる封印映画だった。確か、記憶では、GHQが、黒人ばかり出てくる映画というものを恥じた(つまり国辱映画と考えた)だか何だか、つまるところ、通常のハリウッドコードを公開基準としたかららしい。

ストーミー・ウェザー [DVD]

この時期、他にもGHQが国辱映画として封印した映画がいくつか公開されて、そのうち1つはジョンフォードのタバコロードだった。プアホワイトというのはこういうものだという映画なのだから、こちらはわからないでもない(先進的な民主主義の豊な国アメリカというものを価値観として押し付けるにはいささか問題があるというのは、GHQの立場に立てば理解できる)。

タバコ・ロード [DVD]

それにしてもジョンフォードは大した監督だ。

で、おまけとしてキャブキャロウェイが来日して横浜のブントホテルでショーをやったのでわざわざ妻と観に行ったとか、2人組のタップダンサーがオリエンタルバザーの前を歩いていたとか、いくつかの記憶もある。

で、ボージャングルという名前を記憶しきったところに、RKO時代のアステア・ロジャースの有頂天時代がテレビで流されたので観たわけだ。もしかするとそのときはスウィングタイムというタイトルだったかも知れない。

すると、アステアが顔を黒く塗ってボージャングルのダンスを披露するシーンがあった。

その時、ストーミーウェザーの成立事情は知っていたのだと思う。それで、白人の観客たち(特に映画を観るしかない地方在住の人たち)は、どれだけ人気を博そうとボージャングルを観ることはできない(映画という手段はないわけだから)、それで代替物としてアステアが顔を黒く塗ってタップを踏むのかな、と納得したのを記憶している。

ただ、妙に荒々しさを強調した踊りで(もちろん、アステア固有の優雅な踊りとは趣を異にしている)、両脚を┌┐型に開いたジャンプを多用していて、それはストーミーウェザーで観たボージャングルの(これまた)優雅なタップ(とはいえ、既に老齢になっていたので本人が踏むタップはとても少なかったような記憶がある)とはえらく印象が違って、政治的な意図が透けて見えなくもなくて鼻白む思いをしたのは覚えている。

どう考えても、本来であればアステアはアステアとして、ライバルとしてボージャングルが彼自身で出演するのが映画としては正しかったのではなかろうか(だがそれはコードがある以上あり得なかったものだ)。

有頂天時代 THE RKO COLLECTION [Blu-ray]

(というわけで、アステア・ロジャースの作品としてはトップハットのほうが遥かに好きだ)

というようなことを思い出す昨今の黒塗り顔についてのいろいろ。


2017-12-26

_ パターソン

アップリンクでジャームッシュのパターソン。

ここはおれの備忘録なのですべての筋を書く。

月曜日。ベッドの中の二人。1人はちょっとエキゾチックでたぶんインド系の人。起きると、相手(ちょっと間延びした顔の男だが、角度によってはときどき男前になる)に、双子を産む夢を見たと語る。あなたも双子好き? ああ、好きだよ。

男、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。パターソンは男の名前であり、この町の名前らしい。

腕時計がアップになりくるくる回る。

男(というかパターソン)、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。

晩御飯の話をする。インド系の女性のほうが、カップケーキが人気だったことを話す。

奥さん、カーテンを作ったらしい。白地に黒いくるくるがたくさん。

パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。

火曜日。ベッドの中の二人。

パターソン、制服のようなもの着てを家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。

腕時計がアップになりくるくる回る。

パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。

奥さん、服を作ったのかな。白地に黒いのがたくさん。

パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。

(ちょっと気を失いかけてくる)

水曜日。ベッドの中の二人。

パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。

(ほぼ気を失いかけてくる。いつがいつかまったくわからなくなってくる)

腕時計がアップになりくるくる回る。

パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。

奥さん、自分は音楽の才能があるからギターを習いたいという。教習用DVD込みで200ドル。買ってもいい? よくなさそうではあるが、買っても良いことになる。

パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。

木曜日。ベッドの中の二人。奥さんは全裸。

パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。

腕時計がアップになりくるくる回る。

パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。

パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。

金曜日。ベッドの中の二人。

パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。

腕時計がアップになりくるくる回る。

パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。

奥さん、ギターを取り出して、線路は続くよを歌う。うまいじゃないか。DVD見て練習したから。まだここから先は練習していないの。

パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。

・以上の繰り返しの中に以下のエピソード

・バーで、別れ話と納得しない男のエピソード。最後、男は銃をこめかみに当てる。パターソンが素早く飛び掛かり銃を奪う。ドクが銃を取り、男に向けて撃つ。おもちゃだよ。

・オープンカーに乗ったチンピラ5人組。散歩中のパターソンに向かって話しかける。その犬はブルドッグか? パターソン、びびる。高価な犬だから、盗まれるようだぜ。パターソン、びびる。気をつけなよ。パターソン、びびる。車、走り去る。

・唐突にパターソンの家。扉がいきなり開いて犬が飛び出してくる。郵便受けの柱に抱き着き、倒す。家の中に走り込む。

ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ。カーロス・ウィリアムズ・カーロス。

’・詩を書く子供との対話。韻をうまく踏めないの。僕も好きではない。読むとなんか韻を踏んでいて、それをパターソンが指摘する。

・女性から聞いた詩だ。奥さん目を剥く。いや、子供なんだ。

・奥さん、パターソンに向かって、あなたは素晴らしい詩人なんだから、ノートに書いておくだけではだめ。バックアップを取りなさい。コピーすること。わかった、休みになったらコピーする。

土曜日。ベッドの中の二人。

今日は休み。奥さんはカップケーキをたくさん作ってバザーへ売りに行く。

パターソン、箱に詰めるのを手伝う。車に詰め込むのを手伝う。

パターソン、地下室で詩を書いている。奥さんを賛美する詩。

これまでなかったことなのだが、うまく書けたのか、それとも他の理由からか、ノートを持って上へあがる。

奥さん、カップケーキが売れに売れて260ドルくらいになったと喜んでいる。成功を祝って、映画を観に行きましょう。

ドクターモローの島。

戻ってくると、床の上にゴミクズが散乱している。パターソンが置き忘れた詩のノートを犬が粉々に粉砕したのだ。奥さん、犬を叱る。ガレージへ閉じ込めましょう。

日曜日(だと思う)。

パターソンと犬。犬に向かって、パターソン、「お前なんか嫌いだ」とぽつりと言う。

奥さん戻って来て、ガレージから犬を連れだしているのに驚く。

パターソンが落ち込んでいるので、1人にしておこうとする。いや、僕が散歩してくる。パターソン、外に出る。

パターソン、公園のベンチに腰かけていると、永瀬正敏登場。スーツにネクタイ。ふけたな!

ウィリアムズとでっかくカタカナで書いた詩集を読み始める。パターソン、気になってちらちらとみる。

あなたはこの町の住人ですか? 私はウィリアムズが好きです。ウィリアムズはこの町の出身ですね。あなたもこの町の人ですか?

そうです。ギンズバーグもこの町の出身です。ウィリアムズは町医者でもあったのです。

あなたも詩人ですか?

いえ、私はバスの運転手です。

ウィリアムズも町医者でした。実は私も詩を書きます。

どんな詩ですか?

日本語の詩です。翻訳はしません。詩の翻訳は、コートを着てシャワーを浴びることです。

二人、笑う。

永瀬去る。

パターソン、ベンチに腰掛けたまま。

永瀬戻る。

あなたにあげましょう。まだ何も書いていないノート(表紙はカラフルな雲だったかな)をパターソンへ渡す。

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これはもしかしたら、これまで観たジャームッシュの中で最高の作品かも知れない。途中何度も意識を失ったが。車に乗った犬について警告する連中のシーンは好きだ。最後の唐突な天使の登場も素晴らしい。まさか天使が老け顔眼鏡の日本のスーツ姿のおっさんとは考えもしなかった(出てくるのはタイトルクレジットでわかったが、そこまで出てきていないことは気にもしていなかった)。


2017-12-23

_ ルールを変える

今年のバイロイトのマイスタージンガーを観ていて、つくづく感じるのだが、今やフォークト以外のワルターやローエングリンは考えられない。

フォークト以外のワルターが冬の間は暖炉の前でとか、さあ初めよ! とか、朝の庭は薔薇の香りに包まれてとか歌い出しても、なんだこのおっさんは? としか感じられないおれがいる。完全にテノールのルールを変えてしまったという点で、これまで聞いたことがある古くはタウバーやローレンツあたりからからまさに英雄デルモナコ、自然体こそ美しいステファーノ、雄渾たるカレーラス、そうはいってもエルサレムやキング、美声だったなプラシドドミンゴときたすごいテノールとは全然違う。かといってレジェーロではなく、どう聞いてもワーグナー歌手だ。

ヘルデン(フォークト(クラウス・フロリアン))

昨年のバイロイトのマイスタージンガーは、フォークトがパルジファルへ回ってしまったせいでえらくがっかりした(FMで聴いて)。

今年のマイスタージンガーは、ポーグナーがリストで、エーファがコジマ、ザックスがワグナー、ワルターが多分若いワグナー、ベックメッサーは有名な(でもワグナーの友人)ユダヤ人の音楽家(名前忘れた)。徹底的に第三帝国のワグナーを戯画化して、ついでにワルターとザックスが作ったマイスターの歌を陳腐でくだらない人形劇で、それに対して誤読によって新たな創世にまで達したベックメッサーとしたカテリーナの演出に比べれば、それっぽいコスプレになっているが、ニュルンベルク裁判をからめることで真意が奈辺にあるのか判然としない不思議な演出となっている。200年をそれぞれスライドさせたと考えれば良いのかなぁ。でも、ベックメッサーに典型的なユダヤ人の仮面をかぶせてニュルンベルク裁判に出席させた後に、裁判所の中で平然と盗みをはたらき、手前勝手な論理でザックスを糾弾すると、あれ? もしかしてニュルンベルク裁判どころかホロコースト陰謀論に組しているのかな? とさえ読めてしまう(カテリーナとバランスさせたわけではなかろうに)。

が、とにかくフォークトが歌い始めればそれですべてはOKだ。妙なものだな。

一方に、カウフマンがいる。最初カルメンかチューリッヒあたりでやったトスカを観て、やたらと良い男(そういえば、子供がセビリアのDVDを観て、フローレスを無駄に良い男と言っていたのを思い出した)だが、声が汚くてなんじゃこりゃ? と思ったのが、最近の作品を聞いて(特にメトのパルジファルが良かったが、先日テレビでやっていたカヴァレリアルスチカーナも素晴らしかったし、大地の歌の1人で全部とかびっくり)えらく好きになってきた。考えてみれば、カウフマンも全然テノールではない(音域はテノールだが、声はテノールではない)という点で、ルールを変えたテノールだな。

L'opera(Jonas Kaufmann)

と、21世紀になってもクラシックの世界はルール破壊ががんがん行われていて素晴らしい。(でもルール通りのポレンザーニやカレーヤも好きなわけだが)


2017-12-19

_ 作りながら学ぶReact入門

2~3か月前になるけど、@yuumi3さんから『作りながら学ぶReact入門』をいただいた(サポートページ)。どうもありがとうございます。で先日読んだが、ちゃんと紹介しておくことにする。

ちょうど、Reactも見ておこうと考えていたので良いタイミングだった。

で、読み始めたら、単にReactの入門というだけではなく、現時点のJS(フロントエンドと言ったほうが正しいかな)開発についての目配せがされていて、僕にとっては、それ以上に良いタイミングの本だった。

読者はMacを使っていることを前提としている(一応Windowsとも書いてあるし動作確認はしているみたいだけど、Macのほうが良さそうだ)。

エディターを用意して、Node.jsを入れて、npmを用意したところで、3章に続く。

3章になると、モダンJS開発環境の解説となって、(2章で用意したNodeJSとnpmは当然として)webpackBabelESLintと説明があり、4章でES6の説明となる。

説明は(いろいろな面からおれにはできない)平易な解説というやつだ。読みやすい。

4章の最後はセミコロン無しの勧めで、これは正しいと思う。というのは、1年くらい前から、おれはstandard JSを使うことにしたのだが、結局、セミコロンが必要なのは、妙な書き方をするから必要なのであって(JavaScriptのおもしろさだか続きだかでおもしろがった記憶がある)1行1文であれば別にいらないわけで、書かないと決めれば、そのほうが遥かにきれいに書けるからだ。

ここまでで2/5くらい。

5章がJSXで、ここから本格的にReactの世界(といってよいのだと思う)となるわけだが、ここまでのモダンJSの解説だけでも読む価値(というか、実際に試したわけだが)があった。で、6章7章でコンポーネントを使ってReactのReactなところを過ぎると8章がテスティング。E2Eという言葉はフロントエンド開発エンジニア用語なのかな?(この書き方はおれには初見だった) テストに使うのはMochaというやつで、これもおれには初見。E2EではSeleniumが出てくるので、これは変わっていないのだなと思うと、Seleniumは環境構築が厄介だとして、Nightmare(名前からはこっちのほうが厄介そうだが)というのが使われることになる。

で、最後にこの先へ進むには、としてReduxFlowtypeReact Nativeとかが紹介される。

作りながら学ぶ React入門(吉田裕美)

試しながらでも短期間で読めるし(土日の2日で終わらせようと思えばできる)、上で書いたようにモダンなJS開発の一通りが出てくる(他にもあるかも知れないが、おれには十分だと思えた)ので、JSの入門、再入門には良い本だと思った。


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