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日々の破片

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2016-05-19

_ 成功した失敗プロジェクトと失敗した失敗プロジェクト

高橋さんが『渕一博―その人とコンピュータサイエンス』という本を陰影ある書き方でAIに興味ある人は必読と紹介されていたので、読んでみた。(都立図書館で借りたのだった)とは言っても全部は読んでない。後半、渕の論文集になるのだがたとえば『逆対称声道形の推定と多帯域沪波特性近似』(軽く眺めるとおもしろそうなことが書いてあるけど)とか読む気にはならない。

というわけで興味津々でまともに読んだのは林晋の『情報技術の思想家』という中途半端(とならざるを得ないということが書かれていて、それは生きていて利害関係のある人間のバイアスのかかった証言や反証が出てくることが可能な程度の期間しか過ぎていないものは、歴史として文献ベースで客観的に評価することが難しい壁があるという理由で、なるほどWikipediaが本人による編集を拒むのと同じ理屈であろうし、真実ではなく事実という歴史の見方からはなるほど正しいと判断できる)な人物伝と第5世代コンピュータプロジェクト評価の章(渕一博の思想を発展させたもの)だった。

読んでいて、先日読んだUnixの考古学と対比してしまうのはしょうがないだろう。

Unix考古学 Truth of the Legend(藤田 昭人)

プロジェクトの主体となった巨大家電メーカーのGEのコンピュータ部門とともにMulticsそのものはどこかへ行ってしまったが、途中でビジネス的にうまみがないので手を引いたAT&Tの研究所(BTL)の出向組が引き上げて冷や飯を食わされている暇にあかせてサブセットっぽいもの(=Unix)を作りそれをネタに出向組のビジネス的なプロジェクトとして認めさせると同時にインストール行脚をしながら他の連中のアイディアを取り入れて発展させていくというのが、Unixが成立するまでの流れだった。GEの技術者はMulticsもろともどこかへ行ってしまったが、途中で手を引いたBTLのトンプソンやらリッチーやらはその名前とともにUnixとしてMulticsの成果が残った。

・家電に基盤をおくメーカーは国家プロジェクトの成果を世界に還元できなかった(意図的なのかそれが当然なのかは別の話)

・途中で手を引いたといっても技術的においしいところ、設計としておいしいところ(TSSとか)は継承された

・その他いろいろ

第5世代コンピュータプロジェクトは歴史的にちょうどAIブームが終焉するところにかちあったこと、巨大コンピュータからダウンサイジングするところにかちあったことが問題だったらしい。

でも、読んでいると淵が作りたかったのは違うものだったように(まあ評伝だから悪くは書かないだろうけど、それにしてもそれまでの経歴からいっても)見える。

たとえば、Multics->Unixについては、Multicsのような巨大OSを作るという発想が途中で時代遅れとなって……とか完成したブツを入れたハードウェアでビジネスする主体が……というような問題はあったにしろ、明らかにUnixという成果があった。

つまり、問題は日本の通産省から金をもらってプロジェクトに参加したメーカーにBTLが存在せずに、全部が全部GEだったことこそが問題であり失敗だったということではなかろうか。

ちょっと後付けで考えてみれば、そのころVLSIでMPUという発想はあった。そこに、第5世代の並列の発想を持ち込んでマルチコアMPUとか考えた連中がいたらどうなっていただろうか?(そりゃ当時のプロセス技術だからろくなものにはならないだろう。しかし、25年前からパソコンがマルチプロセッサ当然として動いていたら、20年前には日本のソフトハウスからErlangのような言語が生まれていたっておかしくはない。(あまり良い例が出せない)

雁首ならべてどこにもトンプソンもリッチーも本当にいなかったのだろうか? (そんなこたないだろう)

とすれば、それは何が原因か? というところにこそ問題点があるのではなかろうか。

シグマだって考えてみればそうだ。そこから撤退したあとに、本当はこんなのがほしかったんだよなとジグマ(今作った名前)が生まれたのであればプロジェクトそのものが失敗だからといっても全体として考えれば何の問題でもない。でも、何も残っていない(あるいは単に表に出なかっただけなのかもしれない。でも表に出なければそれはなかったことと同じだ)。

失敗の本質は、だから第5世代コンピュータ(述語論理的プログラミング)がビジネスにならなかったことではなく、そのプロジェクトに参加した人たちが世の中に目に見えて還元できるものを持ち帰らなかったことにある(でも、個々の参加企業にはあるのかもしれないが繰り返しになるが表に出なければ、あるいは関連性を示されなければそれまでだ)。

渕一博―その人とコンピュータサイエンス(田中 穂積/太田 耕三/古川 康一/岡田 久雄/黒川 利明)

(家電屋さんについてはわからないでもない。実際GEもRCAも何かを残したようには見えない。いろいろビジネス的な壁が大きそうだということもわかる。アカデミズムと無縁な業界はせいぜい特許出願くらいでしかソフト(ウェアには限らない)なものは公表とかしないものだ。しかし通信屋さんや研究所や大学とかはどうなんだろう?)

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

Before...

_ arton [「若手の研究者を育てる」は絶対的に渕博士の(真の)ミッションだと推測できるから、そう教える方がいるということはまさに..]

_ soda [Σの方も全然まったく何も残さなかったかというと、そういうわけでもなくて、X11の国際化とか、Wnnとかのフリーソフト..]

_ arton [なんかいろいろ良い話を聞けた感がある!]


2016-05-16

_ Raspberry Pi3でsoracomメモ

SD2016/5を買った以上はsoracomを試したいのでRaspberry Pi3 Model Bを買ったは良いものの、なかなか資材が揃わなかったりして、やっと今日つながった(soracomのSIM自体はFlameを繋いで動作は確認したのだった。というか、何もRaspberyy Pi3を買わずにFlameで良いのではないか? と気付いたときは後の祭り)。

いろいろGoogleと対話しながらではすんなり行かなかったところがあるのでメモを残す。

ソフトウェアデザイン 2016年 05 月号 [雑誌]

1. SDを買ってsoracom SIMを入手

Raspberry Pi3 Model B ボード&ケースセット (Element14版, Clear)-Physical Computing Lab

2. Raspberry Pi3を購入。

3G USB ドングル (FS01BU)

3. USBドングルを購入(soracomで購入した)

ナノSIMのアダプタは随分以前にFlame用に購入したものを流用。マイクロSDは32GBのやつが余っていたのでそれを利用。NOOBSをコピーして準備完了。

F.Wave 【Amazon限定】Lucky ゴールドカラー nano SIM変換アダプター4点セット Gold color(標準 マイクロ Nano) iPhone6/6plus/5S/5C/4S/4/3GS/3用 Gold 金色 f.wave of FuturePlus Original

USB電源はNexus7の(5V2.0A)を流用。

ところが、モニタと繋がらない。HDMIの入力口が無いからだ。で、ここで何を買えば良いかわからずに時間がかかった。モニタにあるのはDisplayPortとDVIとVGAだからだ(それで最初HDMI−DisplayPort変換ケーブルを買ったのだが、これが大間違いで出力DispalyPort、入力HDMIの変換器を買ってしまった。このショックから立ち直るのに数週間)。

で、良く良く考えたら素直にVGA出力にしておけば良かったのだった(なんとなくHDMI出力なのだからVGAでは受けられないのだろうとか余計なことを考えたのだった)。

Ugreen HDMI to VGA変換アダプター音声出力あり 1080P Mirco USBケーブル付 Activeタイプ ブラック

やっとブート画面が見られるようになったので、最初何も考えずに、日本語設定してインストールを開始して、ブート、ターミナルからものの本に合わせてsudo apt-get install wvdialした。ら、ロケール回りでnot foundエラーが出てそこで止まってしまった(実はその次のステップで止まっていたことを後で知るのだが)。なんでこんなところで止まるんだ? と不思議になるが、日本語フォントも無いのにLANGUAGEがja_JP.utf-8になっているのが問題なのかなぁ? ととりあえず、NOOBS入れ直してやり直し。

今度はGBのままで始める。

するとapt-get install wvdialがwvdialの設定でそのまま止まる。今度はロケール回りのエラーは無いので、ふともしかしてモデムを探しに旅をしているのか? と気付いて、FS01BUを挿して(後でやるつもりになっていたのだった)sudo modprobe usbserial vendor=0x1c9e product=0x6801した。/dev/ttyUSB0-2ができたことを確認。しかしwvdialは返ってこない。

一度リブートしてから、dpkg --purge wvdialしてからapt-getをやり直し。

が、wvdialconfがずっとcpuを100%使いながら返ってこない(topを使うことを思い出した)。

あきらめて、wvdialconfをkill。しかしすでに必要なモジュールは導入されているから構成をしようとしているのだし、自動認識はできなくても、ttyUSBということはわかっているのだから、wvdial.confを設定すれば良いのだろうとGoogleと対話して探す。

すると、soracomのハンズオン資料が見つかって、ダイアルするためのスクリプトについて言及がある。ハンズオン資料に書いてあるURIをcurlをしても404だが(ハンズオンのときにテンポラリに置いただけなのだろう)、元のスクリプトはgithub(というかgist)に用意されているのでありがたくそれを利用させてもらうことにする。

で、問題なく接続を確認できた。

init.d用のスクリプトも用意してくれてあるところが素晴らしい。

で、今日(というか1週間くらい)はここまで。


2016-05-15

_ バンプによる中学受験国語

子供が突然、ダンデライオンは中学受験問題にぴったりだと言い出した。

次のフラッシュを見て設問に答えよ。

ダンデライオン(AA版 フラッシュ要)

問1)「空は遠く 狭くなった」とはどういう意味か。30文字で答えよ

問2)「濡れた頬の 温かさは 恐らく お前が くれたんだ」「濡れた頬の 冷たさなど 生涯 お前は 知らなくていい」「濡れた頬の 冷たさなど 恐らく お前が 奪ったんだ」と3回出てくる「濡れた頬」を別の言葉で言い換えよ。

問3) 問2の3つの文章の変化についてそれぞれ主人公の置かれた状態を交えて100文字以内で説明せよ

問4)(1)「橋の向こうで出会ったヤツ」とは何か。(2)なぜそう考えたのか歌詞内の言葉を3個使って100文字以内で答えよ。


2016-05-14

_ ウィーンフォルクスオーパーのチャルダッシュの女王

子供がチャルダッシュの女王が観たいと言うので、上野にウィーンフォルクスオーパーの来日公演を観に行く。

チャルダッシュの女王は一曲ネトレプコの初期の作品集に入っていて、結構好きだから、まあ良いかと乗り気70%程度で行ってみた。

カールマン:ハイア、山々のふところが(喜歌劇《チャールダーシュ侯爵夫人》から)(Anna Netrebko and Emmanuel Villaume and Prague Philharmonia and Prague Philharmonic Choir)

すると、異様に混んでいる。

しかもすさまじくおもしろい。こんなおもしろい作品だったとはまったく知りもしなかった。オペラとミュージカル全盛期(RKOでアステアが踊った頃からMGMでジーンケリーが暴れたりしていた頃まで)のハリウッド映画の合体版のような素晴らしさだ。というか、ハリウッドはコルンゴルトの例を出すまでも無くどれだけ20世紀のウィーンの舞台芸術から影響を受けたのだろう(ルビッチやサークのようにヨーロッパから逃れてハリウッドで活躍した連中が自分たちのルーツとして持ち込んだというようなこともあるだろうし)。

比較の対象がないから舞台としてはいまひとつ良くわからないが(チャルダッシュの女王を歌ったアンドレアロストは物語通りの小さな妖精みたいに素敵なのだが東京文化会館大ホールには声量が追いついていないような印象は受けた)、作品としては好きな舞台作品トップ5に余裕で入るのは間違いなしだった。

初見の作品だが、指揮(ルドルフビーブル。おれは全く知らないわけだが、どうも客席含めてみんなから実に愛されているらしいのがわかった)と演奏が素晴らしいのは始まるやいなやわかった。しかし前から8番目という良いポジションで観たのだが、音の壁がまっすぐ上に昇って歌手の声を遮るようなホールの造りだと初めて気付いた(序曲が終わって幕の後ろに諸行無常なんだから好き勝手に生きようみたいな所信表明の歌が交互に出てくる個所)。いかに新国立劇場が良い劇場かと今更ながら気付いた。

1幕、ブタペストの階段状の舞台をしつらえたキャバレ。口ひげの背の高いうさんくさいプロモータのようなおっさんのフェリ(アクセル・ヘルリヒ、歌も踊りも堂々たるものだ。そういえばサウンドオブミュージックにも口ひげの背が高いうさんくさいプロモータのおじさんが出てくるが、オーストリアのショービジネス界のステレオタイプなのかな)、その友人の歌って踊る若いイケメンの伯爵(ボニ。マルコ・ディ・サピアという人。芸達者で実に楽しい)とかがからみながら、チャルダッシュの女王ことシルヴァ(ジルファ?)のアメリカ公演の話になる。早朝の出発なので朝までみんなでお別れパーティとなり、ボニはバックダンサーと一緒に踊りまくる。ザッツエンターテインメントだ。

支配人(おれは気付かなかったが、子供は新国立劇場のこうもりで牢番フォッシュを演じた人だと気付いた)が次の歌手が来ると今度はそっちが人気になるぜと歌いながらポスターを張り替えていると遅れて若き侯爵エドウィン登場。シルヴァとエドウィンのきれいな歌(曲の作り方が本当にハリウッドスタイルでしびれる(もちろん逆でハリウッドがこちらを取り入れたのだろう)。ヴァイオリンとチェロ(それともコントラバスかな?)のソロだけになる素晴らしく美しい瞬間があったのはこの曲かな?)。

そこに唯一の厭な奴の役回りの従弟の男爵がやって来る。見事にみんなに嫌われるのだが、ボニは彼からエドウィンに内緒で両親が出したエドウィンと伯爵令嬢シュタージ(ベアーテ・リッター。歌がしびれる)の婚約発表の新聞広告の切り抜きを入手する。それを使って、エドウィンが去った後にシルヴァにアメリカ行きを決意させる。

舞台の作りのうまさに唖然としたまま幕間になる。70分間まったくだれない。

ここでプログラムのあらすじを読んでオチを見てしまう。

2幕。ウィーンの侯爵家の客間ホールの手前におかれた待合室。シュタージとエドウィンが、結婚について話し合っている。エドウィンは軍服を着ている(ってことは皇太子は暗殺されたのだな)。エドウィンはシルヴァからの返事を待っている(ボニの陰謀でシルヴァがエドウィンに裏切られたと感じていることを知らない)し、シュタージは貴族どうしだからしょうがないが、他の女に気を取られているエドウィンと結婚することにはすごく懐疑的。ふたりで、北と南に別れて暮らす歌を歌う(これも叙情的な良いナンバー)。

そこにボニとシルヴァが登場。シルヴァは貴族社会のパーティに潜り混むためにボニの奥さんとして扱うことをボニに強要する。

この幕、ボニは常に揺さぶられることになる。シルヴァは腰掛けるや脚を組んで、はっと気付いて直すというジェスチャーをして、貴族社会と芸能人社会の違いを示す。というのを後刻、侯爵夫人と並んで腰掛けるところで示して、知っている(幕間にあらすじを読んでしまったのでおれは知っていたわけだが)人は笑い、知らない人は仕掛けに感づく(というか、侯爵の家柄に関するセリフと微妙な夫人の受け答えから巧妙にオチを感づかせる仕掛けが仕込まれていて、実におもしろい)。シルヴァはそっくりの歌姫がいるということにしてごまかしまくるが、これはコウモリのアデーレの役回りでもあった。そういうオペレッタおきまりのお笑いパターンなんだろうな。

ボニは久しぶりに会ったシュタージの美しさに心を完全に持って行かれる。一方シュタージもハンガリー(だと思ったらこの人もボニもオーストリア人だった)の若き貴公子(しかも気が利きまくり過ぎる才人)に惹かれまくる。この二人の描き方がまた実にうまい。音楽も踊りも良い(ハンガリー人の兄弟のわけのわからない歌。チャルダッシュって、最初ゆっくりした短調のもの悲しげな調子ではじまり一転して長調の激しい舞踏曲になるから演出がしやすいのかも知れない)。素晴らしい舞台だな、おい。

ついにボニはシュタージに求婚するために、ソフィスティケートしまくったシルヴァとの離婚話を始める。

エドウィンは大喜びで、伯爵夫人との結婚なら家柄の問題はないと言い出す。これには歌姫とのプライドがあるシルヴァが傷つく。両親とうまくやれるはずないじゃんと正論を吐いて大暴れし、貴族たちが居並ぶところで、結婚誓約書を破り捨てて退席する。ボニがうまく丸めながらついていく。

続けざまに3幕。

ブタペストの劇場支配人だった男がホテルのラウンジを片付けているとシルヴァとボニ登場。なんでお前がいるんだ? 栄転だなおい。

シルヴァが落ち込んでボニに、自分の態度をどう思うか聞く。田舎娘みたいだな。

そこにプロモータ登場。どうもブタペストで仕事にあぶれてウィーンをうろついているらしい(素晴らしいご都合主義)。もう一度シルヴァと組んで一旗あげようと、引退表明するシルヴァを乗せようと歌い始める。踊り始める。ついには、3人で歌って踊りまくる無茶苦茶なシーンとなる。面白すぎる。そのあと5回くらいアンコールしたけど、そういう芸なんだろう。このしつこくぶらしまくるアンコールを振るのも演奏するのも難しそうだが、すばらしくうまい。舞台の上にはヴァイオリンとコントラバス、ラッパのソリストがいて、それが歌とうまくからむ。カールマンがどこまで作曲しているのかわからないが、繰り返しをだれさせないように巧妙に仕込んである(フェリの首にシルヴァがぶら下がってぐるぐる回るところとかすさまじい)。最初のアンコールではフェリがバースを英語(途中から英語とわかった)、ルフラン(全員)が日本語でやってみせた。(息が上がりかけているのが客席からわかるくらいだ)

すっかりショウビズに戻るつもりになってシルヴァが退出。

入れ替わりに侯爵夫妻登場。ボニを責める。おかげでシュタージは結婚できなくなったじゃないか。ボニは大喜びでシュタージに電話して結婚の承諾を取り付ける。するとフェリが赤毛のヒルダという歌姫の話を始める。侯爵は最後大笑いしながら夫人に呼びかけながら退場。気持ちの良いけりの付け方だな。

入れ替わりにシュタージ登場。歌と踊り。そこに支配人登場。エドウィンがやってくる。ボニはエドウィンと対峙する。エドウィンを揺すぶろうとして自分が揺れる。シルヴァをなだめることを約束して全員を隠す。

シルヴァがやってくると、支配人にかけさせた電話をエドウィンからのように見せかけて、どうしたんだ顔が真っ青じゃないかとくすぐりを入れながらエドウィンの自殺をシルヴァにほのめかす。エドウィンが出てきてめでたし。

突如セピアがかった空間となり、一度だって多すぎる、人生は一度きりと妙な空疎感を醸して終わる。

多分、男爵もエドウィンも(おそらくボニも)戦死することになるのだろう。

あまりにも良かったので、帰宅して子供が探していたらエレールがボニを歌っている音源を見つけたので購入。

Kalman: Csardasfurstin (Die) (The Csardas Princess)(Harald Serafin)

どう聞いても歌い方がオペラ風なことを除けば、極上のハリウッドミュージカルのサントラだ。


2016-05-08

_ アルゴールの城読了

残り半分で面倒くさくなって置きっぱなしにしていたアルゴールの城を読了。

筋はいくつにも考えられる。

アルゴールの城を手に入れたアルベールの元に親友エルミニアンが美しい女性ハイデ(アイデ?)を連れて訪れる。

昼、ハイデはあるときはアルベールと、あるときはエルミニアンと深い森の中へ消える。夜は3人で談話をする。古今東西の知識と深い考察を持つ3人の衒学談は印象のみが語られる。

ハイデは森の奥の泉で死んでいる。次の章ではエルミニアンは失踪し二人の静謐な暮らしが訪れる。エルミニアンは落馬して瀕死の状態で見つかる。

エルミニアンは回復し調査結果をもとにアルベールと城の中の抜け穴を探検し、それがハイデの部屋へ通じていることを見つける。

ハイデは毒を飲んで死に、エルミニアンは城を立ち去り、刺し殺される。

エルミニアンは何をしに城へ来たのか、そもそもハイデは生きて存在しているのか(エルミニアンとハイデが来る前にアルベールは墓へハイデという名前を刻む)、何か死にまつわる何かがあったことは明らかなのだが、それはアルゴールの城そのものの記憶のようでもある。

淡々とまったく意味を持たない描写のみが、しかし饒舌過ぎるくらいに入ることと、動きのなさからロブグリエとデュラスとアランレネの共作が想起される。

去年マリエンバートで [Blu-ray]

ドラマはあるのだが、それは直接は語られない(マリエンバードではバルコニーの欄干が崩落するところは描かれていた)ので、何が起きたかあるいは何も起きていないのかは想像するしかない。

これは全くパルジファルではないということはわかった。

アルゴールの城にて (岩波文庫)(ジュリアン・グラック/安藤 元雄)

たしかにハイデの寝台の脇には聖杯の画がかかっている。しかし、ここでは誰も救済のために血を流すものはいない。むしろトリスタンとイゾルデとマルケ王だ。しかも第3幕で、トリスタンはすでに城へ帰還している。

テクストの快楽という観点からは実に秀れた作品だが、物語の悦楽はまったくなく、このタイプの作品の読み方を思い出すまでに時間がかかった。


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