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日々の破片

著作一覧

2026-05-07

_ メトのトリスタンとイゾルデ

東劇でメトライブビューイングのトリスタンとイゾルデ。

最初暗闇のテーブルに向かい合うトリスタンとイゾルデで始まる。暗いままなのでセガンの入場がわからず、拍手されないまま前奏曲が始まる。これは良い!

リーゼダヴィッドセンは別格(それ以外の歌手も良いのだが、割りを食っているのは二重唱が必要なスパイアーズ)。2幕がすごい。演出は最後イゾルデが出産し、その赤ん坊をマルケ王が慈しむという解釈。それによって、愛の死が再生につづく。なかなか悪くない読みだった。

ただ、この楽劇は物語が最低で、延々4時間近くやっているのに、1幕は殺してやる殺してやる、2幕はトリスタン! イゾルデ!、3幕は船はまだか、だけなので退屈は退屈ではある。というわけで、演出家が前奏曲がすべてと言うのもわかる。前奏曲だけ聴いていれば十分ではある(が、別格な歌手が歌う愛の死は別格なのだ)。


2026-05-06

_ 長沢かわいい蘆雪

府中市美術館の長沢かわいい蘆雪展行ってきた。

無料の臨時駐車場などは満車で入れないので、文化センターの駐車場(1時間100円、最大500円なので無料と同じじゃん)に入れた。

館内もものすごく混んでてびっくりした。府中侮れないな。

最初のあたりの応挙と蘆雪の鯉比べを読まずに解説通りに当てて(あまりに混んでいるので行列捨ててピンポイント爆撃にした)気を良くしたというか解説読まなくても良さそうだからおもしろそうと目についたやつだけ見ても余裕で1時間かかった。

が、読める隙間があるときは一応解説を読むと異様に懇切丁寧で(悪く言うと押し付けがましいが)学芸員が本気でコンテンツ作っているのがわかって混んでいるのも当然と納得した。よい仕事っぷりは蘆雪みたいだ。

特に圧巻なのは最後の龍虎の襖絵で、虎の後ろ脚だけで15分は楽しめる。で、龍はスルーかなと思ったら解説に虎が凄すぎるからと龍をスルーするのは遺憾とあって、ちょっと反省。良く書かれた解説だ。とは言え虎だな。

ヌハハーと横っ飛びする蝙蝠(耳とその下の一文字がとても良い)、籠から抜け出して意気軒高の鶏、むじゃむじゃ湧き出る孫たち、豊干寒山拾得になつきまくる虎とか最高だった。

かわいいのは犬で、猫は居ないのかと思ったが、まさかの虎の大爆発とは想像もしていなかった。

満足しまくった。


2026-05-04

_ プロジェクトヘイルメアリー

品川のiMAXにプロジェクトヘイルメアリーを観に行く。

小説で読んだから映画は観なくてもいいかなと思っていたが子供が勧めるので観ることにした。

なんかロッキーが黒焦げになったのを一生懸命救おうとしたり、燃料をどうにかしようと頑張ったりするところが無くなっていて、代わりにロッキー側が最初の接触から頑張るところを膨らませている印象を受けた。多分、映画としては絵になる方を重視した(で、主人公の性格からロッキーを助けるために同様に頑張るのは自明だし、それほど絵になるわけでもないからスルーした)のだろうなと、構成の妙に感心した。

あと、とにかく独白(かつ思考実験)がほとんどなのを絵的に解決するためか、音声でログするようにしているのはおもしろい。でもテキストのほうが効率良いからちょっと作り過ぎな気もした。

会議の場面は独立しておもしろい。

と、全編まったく退屈することなく楽しめた。


2026-04-28

_ メリーポピンズ

シアターオーブでメリーポピンズ。

ディズニーの映画は何度か見ているが、特にレッツゴーフライアカイトはディズニーソングスLDを持っていて子供としょっちゅう見ていたので印象が強い(※)。そのミュージカル版らしい。

が、ひげのおっさんで随分子供と歳が離れていそうな映画版と異なり、ここでのジョージ・バンクスは比較的若くて強迫的に仕事の鬼で子供を放置している。映画版のサフラジェッター(スーパージェッターみたいだな)の奥さんと違って、元々女優の奥さんは普通に専業主婦っぽいのだが夫の愚痴の聞き役なのは良いとして、はていったい普段は何をしているのだろう? といささか不可思議な存在(家事は家政婦と庭師ではなさそうななんでもやる下男?、子供の面倒は家庭教師(乳母?)に任せているわけだし)。なんだが、演出ではあまりにジョージ・バンクスがいらついてばかりいるので妙に同情を引く。

いらついていると言えば、映画版ではマイケルは糞餓鬼印象が強いがジェーンは全然記憶にないくらいわけだが、ミュージカルというよりも久住星空という役者が凄いのだろうけど、ジェーンの糞餓鬼っぷりがとてつもない。死ぬよりも苦い消毒薬を瓶から直接飲ませたほうが良かろうとすら感じさせるだけに、バンクス夫妻に同情してしまう。

町の描写(犬の散歩婦人とか提督とか)は、なんとなくパディントンの町を思わせる。これが標準的なイギリスの町ってことはあり得ないだろうが、異なる創作物が同じような描写をしていると、はてこれが普通なのか? と思わず感じてしまうのだった。

ミュージカルは最初から最後まで出ずっぱりなので(音楽もチムチムニー、とカタカナで書いて気づいたがチムニーか。なるほどバートの歌だ)全体的にバートがすべてを回しているように見える。ロンドンの家々の屋根から人々を見守る天使の役回りで固定しているかのようだが、悪くない。2幕の煙突掃除夫大集合は実に楽しい。

メリーポピンズは突如登場。この突如登場は2幕の冒頭でも再現されるが、映画とは異なるミスアンドリュー。それにしてもバードウーマンとミスアンドリューが2役というのは、性格も役回りも正反対だけにおもしろい構成だ。

銀行とバンクスファミリーの闘争は映画よりもはるかにしっかり作られていておもしろい。最初の時点でジョージが選択する融資先は直前にメリーポピンズが訪問しているのでマジックにひっかかったのかと思わせながら、やはりそうではなくジョージの本来の良性の発揮なのだろう。最初の起業家の言っていることがまるでトークン(「暗号」とか「仮想」とかの日本語を捨てて、完全カタカナ化したことでうさんくささが爆発しているわけだが、一般論としては逆にカタカナ化することでマジックとなるのだろう)で(でも少なくとも元のミュージカルの脚本もそうなのだろう?)いつの時代も変わらぬマジックビジネスってあるなぁと笑いを誘う。

結局ジョージの見立ては正しいわけで(とならなければ物語が成立しない)そこでビジネス成功の秘密を頭取に聞かれてジョージがドーシャスと答える謎はおもしろい。まさかここでドーシャスが出て来るとは思っていなかった。人間を見るのですのような台詞が飛び出ると思い込んでいた。それにしてもドーシャス、公園の店でメリーが即席で作ったのを自宅待機時にジョージが耳にしたのか、それともすでにジョージがミスアンドリューに虐待される前に作っていたのか、とか。

演劇として舌を巻くのはメリーポピンズが空を飛んだり、バートが360度タップを踏んだり、凧が上がったりのマジックの数々(そもそも幕の煙突から煙がゆらゆらしているのも、幕ではなくてマジックと言えなくもない。が、最初、稲妻が次々と降り注いでいるのかと思った)。

それにしても印象的なセリフは6ペンスと6ペンス、合わせて1シリングってやつだ。10時から10時間後、つまりは8時のようなわけのわからなさだ(なので24時間で考えるのが好きだ。10時の10時間後は20時に決まっているが、仕事では10に10を足すと100なわけだが)。

とても良い体験だった。

※)ちょっと安かったので有線リモコンのLDプレイヤーを使っていたのだが、ときどき子供(3歳ちょい前くらいの時かな)がそのコードを両手で間をたるませて持って引っ張ったりしている(リモコンは子供の頭よりちょっと高いあたりに置いてあるので片側は上に伸びている)のが謎で妻とあれは何しているのかなぁと言い合っていたのだが、まさにレッツゴーフライアカイトの凧あげを見立てていたのだと気づいて膝を打ったのは良い思い出。ミュージカル版は舞台で演じる以上遠目にならざるを得ないからだろうが糸をたぐるような動きではないが、そこはどうでも良い(音楽がレッツゴーフライアカイトだから)。


2026-04-02

_ 清教徒

東劇でメトライブビューイングの清教徒。

このオペラは話がおもしろかった記憶があるのだが、やはりあらは多いので、演出はいろいろ読み替えている。

最初、アルトゥーロは(あとで子供に指摘されて気づいたが)父親と出てきて、父親は連行される(物語上は処刑される)。

最後、アルトゥーロはこのいかれた邪教カルトのご都合主義に愛想を尽かして父親の亡霊と共に去る。とはいえ、歴史的には邪教カルトというよりもスチュアート朝もろくでもないから、むしろまともな市民革命ではあるのだが。

ブラウンリーは、新国立劇場のリゴレットでも凄い歌手だと思ったが、ここでも見事なアルトゥーロ。

楽しめた。


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