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日々の破片

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2026-07-12

_ エレクトラ

新国立劇場でエレクトラ。なんといってもタイトルロールのアイレ・アッソーニのエレクトラが素晴らしい。歌い方、声、声量どれをとっても素晴らしい。一方妹のヘドヴィグ・ハウゲルドはちょっとうるさいなぁと感じたが、最後の姉妹二重唱は見事で、つくづくシュトラウスの女性重唱の美しさを堪能できた。

曲としてはサロメもそうだが、この時期(表現主義だろう)のシュトラウスの怪鳥のような不協和音の連鎖はもうどうでも良いなぁと感じる。とはいえおもしろいはおもしろいので微妙なところだ。

ホフマンスタールの作劇でほぉと思ったのは、エレクトラが斧を渡していないと衝撃を受けるところで、なんでわざわざこうしたのか? と考えさせるところだ。あり得るとしたら斧を使えばそれは父親殺しに対する復讐というコンテキストとなるところが、(多分)剣を使うことで新たな王朝の創出となることだろう。なんか劉朝が王朝となりまた劉朝に戻る漢みたいだなと思った(が、王莽とエギストには簒奪方法についてはまったく共通点はない)。子供はさらに、最後がクリソテミスがオレストの名を呼ぶところに意味を見つけていた。

かくして復讐という文脈を外れることで、この演出のエレクトラはクリテムネストラ(もちろん藤村実穂子はうまい)を瞑目させて立ち去ることもできる。


2026-06-30

_ シラグーザ

浜離宮朝日ホールでシラグーザのリサイタル。初めて行く会場だがこじんまりしているわりには立派なホールになっていて、歌手のリサイタルや室内楽にはよさそうだ。

前半はオペラ、後半はカンツォーネとなっていて、考えてみるまでもなくカンツォーネのコンサートというのは初めてだ。

オペラは、まずはネモリーノで新国立でも聴いているが当然ながらのシラグーザ。が、オペラとして聴くのではなくピアノ伴奏で歌だけ聴くと全然別の印象で、明暗のつけ方もうまいわけだが、ピアノが実に音色豊かで楽しい。

で、グノーなどを挟んで最後がなんと冷たい手だとなるわけだが、なんか昨年だか一昨年だかに初めてロドルフォを歌ったそうだが、実に良い。なんかフローレスの印象があるのでベルカントテノールがリリックを歌うとちょっと気持ち悪くなりそうだなと思ったが、全然そんなことない。どうやって生きているのか? 生きているのです。というか、オペラの舞台で見たい。

カンツォーネのほうは、トトとかララとか同じ音の繰り返しの作家の曲がどちらも実におもしろい。名歌手が歌えばポップも抜群というか、このリサイタルはオペラもカンツォーネもポップの極みだったのだ。

とにかく実に楽しい。ピアノの人(この人の表現力は、ホールとスタインウェイの力もあるかも知れないが、抜群だと思う。オーケストラいらないじゃん)もリスト編曲の面倒そうな曲も楽しそうに弾いているし、シラグーザの表情も楽しく、妙に幸福感に満ち溢れて、こういう経験は初めてかも知れない。

アンコールを子供と幕間に何をやるのか? と話し合って、あっちは多分女心の歌だろうというので、こっちはカンツォーネといったら一番有名なのにm演目にはないわけだからオーソレミオだろうといったら、両方とも歌ってくれた。特にオーソレミオは舞台から降りてきて客席往復で、実にサービス満点、最後まで楽しかった。

配布物のパンフレットを読んで仰天したのは、シラグーザが還暦を迎えているということで、最初にチェネレントラで王子を観たときに30前の若手だからこれだけの技量と良い声(美声というのとは微妙に違うのだが、実に好みにっている癖がある)の持ち主を呼べたのだなと思っていたが、全然違って40過ぎの大ベテランだったわけだ。身軽な人なのだな。還暦過ぎてバリトンというわけでもなく普通にテノールとしてリサイタルをやれて声を張り上げられるのだからただものではなく感服しまくり。


2026-05-24

_ ウェルテル

新国立劇場でウェルテル。

なんといっても脇園彩のシャルロットが圧倒的。声量もあればつやもある。

ユルケヴィチの指揮はえらくメリハリがついている。冒頭、ちょっと驚いた。

ウェルテルのカストロノーヴォは好きな声ではないが、悪くなかった。

というわけで全体、ものすごくよいものだった。


2026-05-07

_ メトのトリスタンとイゾルデ

東劇でメトライブビューイングのトリスタンとイゾルデ。

最初暗闇のテーブルに向かい合うトリスタンとイゾルデで始まる。暗いままなのでセガンの入場がわからず、拍手されないまま前奏曲が始まる。これは良い!

リーゼダヴィッドセンは別格(それ以外の歌手も良いのだが、割りを食っているのは二重唱が必要なスパイアーズ)。2幕がすごい。演出は最後イゾルデが出産し、その赤ん坊をマルケ王が慈しむという解釈。それによって、愛の死が再生につづく。なかなか悪くない読みだった。

ただ、この楽劇は物語が最低で、延々4時間近くやっているのに、1幕は殺してやる殺してやる、2幕はトリスタン! イゾルデ!、3幕は船はまだか、だけなので退屈は退屈ではある。というわけで、演出家が前奏曲がすべてと言うのもわかる。前奏曲だけ聴いていれば十分ではある(が、別格な歌手が歌う愛の死は別格なのだ)。


2026-05-06

_ 長沢かわいい蘆雪

府中市美術館の長沢かわいい蘆雪展行ってきた。

無料の臨時駐車場などは満車で入れないので、文化センターの駐車場(1時間100円、最大500円なので無料と同じじゃん)に入れた。

館内もものすごく混んでてびっくりした。府中侮れないな。

最初のあたりの応挙と蘆雪の鯉比べを読まずに解説通りに当てて(あまりに混んでいるので行列捨ててピンポイント爆撃にした)気を良くしたというか解説読まなくても良さそうだからおもしろそうと目についたやつだけ見ても余裕で1時間かかった。

が、読める隙間があるときは一応解説を読むと異様に懇切丁寧で(悪く言うと押し付けがましいが)学芸員が本気でコンテンツ作っているのがわかって混んでいるのも当然と納得した。よい仕事っぷりは蘆雪みたいだ。

特に圧巻なのは最後の龍虎の襖絵で、虎の後ろ脚だけで15分は楽しめる。で、龍はスルーかなと思ったら解説に虎が凄すぎるからと龍をスルーするのは遺憾とあって、ちょっと反省。良く書かれた解説だ。とは言え虎だな。

ヌハハーと横っ飛びする蝙蝠(耳とその下の一文字がとても良い)、籠から抜け出して意気軒高の鶏、むじゃむじゃ湧き出る孫たち、豊干寒山拾得になつきまくる虎とか最高だった。

かわいいのは犬で、猫は居ないのかと思ったが、まさかの虎の大爆発とは想像もしていなかった。

満足しまくった。


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